
石油化学新聞 5439号(2025.6.23)
THE PETROCHEMICAL PRESS
- トクヤマ・・・次期中計で成長顕現 電子・健康 新たなステージへ
- 日本ゼオン・・・半導体材料、水島でCPN増設検討 医薬品合成用溶剤も
- ダイセル・・・電流遮断器をEV重点に欧中で拡販
<特集>差別化と顧客開 拓がカギ/タイ の日系企業 (2~3面)
新たな成長シナリオを 新興市場の需要獲得も課題
タイ経済は80年代以降、工業化と外資誘致により急成長を遂げた。特に自動車・電子機器産業の発展が牽引し、ASEANの製造拠点として確固たる地位を築いた。しかし近年は景気対策の一巡や人口構造の変化、輸出環境の悪化などにより成長が鈍化。24年のGDP成長率は2・5%と東南アジアの中でミャンマーに次ぐ低い伸び率となった。中でも自動車産業の不振が続く。景気悪化や家計債務の拡大で国内販売が低迷し、EV市場の拡大で中国メーカーの攻勢も強まる。24年の自動車生産台数は147万台と前年から約2割減少。日系自動車メーカーのシェアが低下し、一部では生産縮小や撤退の動きもみられている。タイに進出している日系の化学メーカーは、これまで日系メーカー向けの供給拠点としての強みを生かしてきた。しかし環境変化により成長シナリオが崩れ、生き残るための新たな戦略が求められている。現地ニーズに対応した差別化製品の開発や新規顧客の開拓がカギとなる。さらにタイを起点にインドなど新興市場の需要獲得も重要なテーマだ。APICタイ・バンコク開催に合わせ現地の各社を取材した。
概況
- タイのエチレンとポリエチレン需給
GC―M PTA

GCMのラヨーン工場
GC―M PTA(GCM)は高純度テレフタル酸(PTA)の生産・販売を手掛ける。95年の設立当初はサイアムセメントグループケミカルズと三井化学の折半出資による合弁会社だっが、18年のPTTグローバルケミカル(GC)への株式譲渡により、三井化学の出資比率は26
%となった。

谷垣直洋上級副社長
- 高品質と安定供給で中国品に対抗
- 設備更新など継続的に実行
グランド・サイアム・コンポジッツ
グランド・サイアム・コンポジッツ(GSC)は、タイを拠点にポリプロピレン(PP)コンパウンドの製造・販売を行っている。同国大手化学企業のサイアムセメントグループケミカルズ(SCGC)、三井化学、プライムポリマーなどが出資する。96年に会社を設立し、97年にタイ東部ラヨーン県のSCGCコンプレックス内に建設した工場が商業運転を開始した。アジア市場において長年の実績を持ち、域内最大規模の生産能力を誇る。

水川修一社長
- 技術力と製品開発力で強固な信頼
- 三井化学との連携強みに
タイPETレジン

TPRCのラヨーン工場
タイPETレジン(TPRC)は、ペットボトルなどの原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を生産・販売している。PTTグローバルケミカル(GC)が74%、三井化学が26%出資し、ラヨーン県の工場に年産20万㌧の生産設備を持つ。販売構成は国内が約70%、輸出が約30%を占め、国内では飲料容器向けが中心となるほか化粧品やシャンプーの容器、医薬品の容器などにも提供している。
- 日本への供給拡大検討
- 高付加価値用途へも展開
旭化成プラスチックス(タイランド)

APTのアユタヤ工場
旭化成プラスチックス( タイランド)(APT)は、99年に設立された。バンコク近郊のアユタヤ工場では、エンジニアリングプラスチックの3製品、ナイロン66樹脂「レオナ」、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂「ザイロン」、ポリアセタール(POM)樹脂「テナック」のコンパウンド製品を生産している。従業員は約200人、うち日本人スタッフ7人が在籍する。バンコクのオフィスには営業と技術サービスのチームが所属する。同居するグループ会社との協力体制も活用し、エンプラの市場開拓を進める。

小池尚生社長
- エンプラ事業機会創出
- アジアの各拠点連携強化
サンヨーカセイ( タイランド)

SKTのラヨーン工場
市場開拓加速
サンヨーカセイ(タイランド)(SKT)は、三洋化成グループの東南アジア市場における主要拠点として97年に設立、01年に操業を開始した。本社はバンコクにあり工場はラヨーン県に位置する。親会社である三洋化成が約80%、豊田通商とタイ企業がそれぞれ約10%出資する。

前田哲社長
- 軸は高付加価値製品
- 品質と性能重視の顧客に力
クラレグループ2社

ラヨーン県のイソプレン関連プラント
クラレはタイにおいて、耐熱性ポリアミド樹脂(PA9T)「ジェネスタ」、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」、3―メチル―1・5―ペンタンジオール(MPD)の生産と販売を行っている。ジェネスタとセプトンは、タイの石化大手PTTグローバル・ケミカル( PTTGC)と住友商事との合弁企業であるクラレ・GC・アドバンスト・マテリアルズが、MPDは完全子会社であるクラレ・アドバンスト・ケミカルズタイランドがそれぞれ手掛けている。

髙橋和喜社長
- 「ジェネスタ」軸に展開
- イソプレン事業の拡大図る
トウアゴウセイ・タイランド

チョンブリー県にある本社と工場
トウアゴウセイ・タイランドは16年に設立され、ポリマー工場は18年に、エラストマー工場は19年に稼働した。20年にバンコクにオフィスを構え一部の営業機能を移転した。
本社と工場はタイ東部チョンブリー県のWHAイースタン・シーボード工業団地に位置する。バンコク市内からは距離があるものの、タイ最大規模のレムチャバン港に近く、多くの日系企業が拠点を構える良好なビジネス環境にある。ASEAN市場への重要な供給拠点として機能している。

山口修平社長
- 市場でプレゼンス向上
- 高付加価値製品 信頼高め採用進む
THE PETROCHEMICAL PRESS
- 日本ゼオン・・・単層CNT、LIB向け拡販 生産能力増強
- クラサスケミカル・・・単独で持続成長めざす 大分コンビナート強みに
- 日本化薬・・・触媒売上高100億円超 今期予想
- 東洋紡・・・抗体医薬品精製工程生産性高める分離膜 大塚化学と共同開発
- ダイセル・・・設計者CAE活用 長瀬産業と協業
- 第一工業製薬・・・CNFがミズノゴルフクラブに
- 三菱ケミカル・・・PMMA生産拠点 中国・南通市内で移転
- 三菱ガス化学とRITE・・・万博会場でCO2回収CCUSへ
- 横河電機・・・設備保全ロボット技術融合へ協業 シェル・グローバル・ソリューションズと
- アズビル・・・関電4火力に異常予兆検知システム
- 石油化学工業協会・・・5月の石化製品生産実績、5月の汎用4樹脂の出荷実績
- 化学製品値上げ
・レゾナック・・・次亜塩素酸ソーダを7月18日納入分から1㌔㌘9円以上値上げする。
・旭化成建材・・・26年1月から軽量気泡コンクリート(ALC)製品を10~12%値上げする。