石油化学新聞

THE PETROCHEMICAL PRESS

クレハ・・・PVDF 車載LIB向け拡充 

変化に強い事業へ

クレハはフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)事業で新グレード開発を加速させる。主力用途の車載リチウムイオン電池(LIB)正極用バインダー向けでは3元系(ニッケル、マンガン、コバルト)正極用の新グレードを拡充し、新たな顧客開拓につなげる。これまで手薄だったリン酸鉄系(LFP)正極に対応した新グレードも開発し、大型案件の獲得を狙う。車載以外のエネルギー貯蔵装置(ESS)用LIB向け、工業用途へのPVDFの拡販も推進する。

成長軌道回帰狙う三井化学 橋本修社長に聞く

成長3領域 利益拡大を再加速 B&GMは 27 年分社化へ

27年に石油化学事業を中心とするベーシック&グリーンマテリアルズ(B&GM)の分社化を打ち出した三井化学。石化業界の再編や統合を促し競争力のあるグリーンコンビナートとしての事業体を目指す。同時に成長3領域に位置付けるICT、モビリティ、ライフ&ヘルスケア(L&HC)へ経営資源を集中し長期ビジョンに基づく成長軌道への回帰を狙う。橋本修社長に今後の経営戦略を聞いた。
―経営環境はいかがですか。
24年度はB&GMの事業環境が厳しい一年だった。中国の供給過剰による市況悪化と、当社大阪工場のエチレンプラントのトラブルという二重の打撃を受けた。成長3領域のコア営業利益は19年度比で20年度以降は年率11~12%の拡大を達成してきた。しかし、近年は伸び率に鈍化がみられ、戦略の見直しが必要だ。
25年度は米国トランプ関税を見越し、コア営業利益で80億円のマイナス影響を予測している。直接的な影響以上に懸念されるのは、世界経済のファンダメンタルが冷え込むことだ。
―地政学リスクへの対応は。

  • トクヤマ・・・次期中計で成長顕現 電子・健康 新たなステージへ
  • 日本ゼオン・・・半導体材料、水島でCPN増設検討 医薬品合成用溶剤も
  • ダイセル・・・電流遮断器をEV重点に欧中で拡販

<特集>差別化と顧客開 拓がカギ/タイ の日系企業 (2~3面)

新たな成長シナリオを 新興市場の需要獲得も課題
タイ経済は80年代以降、工業化と外資誘致により急成長を遂げた。特に自動車・電子機器産業の発展が牽引し、ASEANの製造拠点として確固たる地位を築いた。しかし近年は景気対策の一巡や人口構造の変化、輸出環境の悪化などにより成長が鈍化。24年のGDP成長率は2・5%と東南アジアの中でミャンマーに次ぐ低い伸び率となった。中でも自動車産業の不振が続く。景気悪化や家計債務の拡大で国内販売が低迷し、EV市場の拡大で中国メーカーの攻勢も強まる。24年の自動車生産台数は147万台と前年から約2割減少。日系自動車メーカーのシェアが低下し、一部では生産縮小や撤退の動きもみられている。タイに進出している日系の化学メーカーは、これまで日系メーカー向けの供給拠点としての強みを生かしてきた。しかし環境変化により成長シナリオが崩れ、生き残るための新たな戦略が求められている。現地ニーズに対応した差別化製品の開発や新規顧客の開拓がカギとなる。さらにタイを起点にインドなど新興市場の需要獲得も重要なテーマだ。APICタイ・バンコク開催に合わせ現地の各社を取材した。

概況

  • タイのエチレンとポリエチレン需給


GC―M PTA

GCMのラヨーン工場

GC―M PTA(GCM)は高純度テレフタル酸(PTA)の生産・販売を手掛ける。95年の設立当初はサイアムセメントグループケミカルズと三井化学の折半出資による合弁会社だっが、18年のPTTグローバルケミカル(GC)への株式譲渡により、三井化学の出資比率は26
%となった。

谷垣直洋上級副社長

  • 高品質と安定供給で中国品に対抗
  • 設備更新など継続的に実行


グランド・サイアム・コンポジッツ


グランド・サイアム・コンポジッツ(GSC)は、タイを拠点にポリプロピレン(PP)コンパウンドの製造・販売を行っている。同国大手化学企業のサイアムセメントグループケミカルズ(SCGC)、三井化学、プライムポリマーなどが出資する。96年に会社を設立し、97年にタイ東部ラヨーン県のSCGCコンプレックス内に建設した工場が商業運転を開始した。アジア市場において長年の実績を持ち、域内最大規模の生産能力を誇る。

水川修一社長

  • 技術力と製品開発力で強固な信頼
  • 三井化学との連携強みに

 


タイPETレジン

TPRCのラヨーン工場

タイPETレジン(TPRC)は、ペットボトルなどの原料であるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を生産・販売している。PTTグローバルケミカル(GC)が74%、三井化学が26%出資し、ラヨーン県の工場に年産20万㌧の生産設備を持つ。販売構成は国内が約70%、輸出が約30%を占め、国内では飲料容器向けが中心となるほか化粧品やシャンプーの容器、医薬品の容器などにも提供している。

  • 日本への供給拡大検討
  • 高付加価値用途へも展開


旭化成プラスチックス(タイランド)

APTのアユタヤ工場

旭化成プラスチックス( タイランド)(APT)は、99年に設立された。バンコク近郊のアユタヤ工場では、エンジニアリングプラスチックの3製品、ナイロン66樹脂「レオナ」、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂「ザイロン」、ポリアセタール(POM)樹脂「テナック」のコンパウンド製品を生産している。従業員は約200人、うち日本人スタッフ7人が在籍する。バンコクのオフィスには営業と技術サービスのチームが所属する。同居するグループ会社との協力体制も活用し、エンプラの市場開拓を進める。

小池尚生社長

  • エンプラ事業機会創出
  • アジアの各拠点連携強化


サンヨーカセイ( タイランド)

SKTのラヨーン工場

市場開拓加速
サンヨーカセイ(タイランド)(SKT)は、三洋化成グループの東南アジア市場における主要拠点として97年に設立、01年に操業を開始した。本社はバンコクにあり工場はラヨーン県に位置する。親会社である三洋化成が約80%、豊田通商とタイ企業がそれぞれ約10%出資する。

前田哲社長

  • 軸は高付加価値製品
  • 品質と性能重視の顧客に力


クラレグループ2社

ラヨーン県のイソプレン関連プラント

クラレはタイにおいて、耐熱性ポリアミド樹脂(PA9T)「ジェネスタ」、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」、3―メチル―1・5―ペンタンジオール(MPD)の生産と販売を行っている。ジェネスタとセプトンは、タイの石化大手PTTグローバル・ケミカル( PTTGC)と住友商事との合弁企業であるクラレ・GC・アドバンスト・マテリアルズが、MPDは完全子会社であるクラレ・アドバンスト・ケミカルズタイランドがそれぞれ手掛けている。

髙橋和喜社長

  • 「ジェネスタ」軸に展開
  • イソプレン事業の拡大図る


トウアゴウセイ・タイランド

チョンブリー県にある本社と工場

トウアゴウセイ・タイランドは16年に設立され、ポリマー工場は18年に、エラストマー工場は19年に稼働した。20年にバンコクにオフィスを構え一部の営業機能を移転した。
本社と工場はタイ東部チョンブリー県のWHAイースタン・シーボード工業団地に位置する。バンコク市内からは距離があるものの、タイ最大規模のレムチャバン港に近く、多くの日系企業が拠点を構える良好なビジネス環境にある。ASEAN市場への重要な供給拠点として機能している。

山口修平社長

  • 市場でプレゼンス向上
  • 高付加価値製品 信頼高め採用進む

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UBE・・・スペシャリティに力 キャリアオーナー制

成長加速へ来期導入

UBEは今期始動した中期経営計画でスペシャリティ事業の成長を重点施策の一つに掲げるなか、成長加速に向けた人事制度として26年4月にキャリアオーナーシップを導入する。従業員が自らキャリアを選択、そのうえでスペシャリティ事業の拡販など中計に沿った人材を育成する。研究開発、製造、営業、間接部門といった部署から成長を牽引するスペシャリスト、リーダーを排出していく。

  • 日本ゼオン・・・単層CNT、LIB向け拡販 生産能力増強
  • クラサスケミカル・・・単独で持続成長めざす 大分コンビナート強みに
  • 日本化薬・・・触媒売上高100億円超 今期予想
  • 東洋紡・・・抗体医薬品精製工程生産性高める分離膜 大塚化学と共同開発
  • ダイセル・・・設計者CAE活用 長瀬産業と協業
  • 第一工業製薬・・・CNFがミズノゴルフクラブに
  • 三菱ケミカル・・・PMMA生産拠点 中国・南通市内で移転
  • 三菱ガス化学とRITE・・・万博会場でCO回収CCUSへ
  • 横河電機・・・設備保全ロボット技術融合へ協業 シェル・グローバル・ソリューションズと
  • アズビル・・・関電4火力に異常予兆検知システム
  • 石油化学工業協会・・・5月の石化製品生産実績、5月の汎用4樹脂の出荷実績
  • 化学製品値上げ
    ・レゾナック・・・次亜塩素酸ソーダを7月18日納入分から1㌔㌘9円以上値上げする。
    ・旭化成建材・・・26年1月から軽量気泡コンクリート(ALC)製品を10~12%値上げする。

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