(2004/7/26プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)

時間−推進力と忍耐力

 ある日、知らない人から電子メールが届いた。同じ日付で違う内容のメールが4通もあった。次の日も、その次の日も、メールは続いた。内容は「日本のコーヒーチェーン店を韓国で展開したいから良さそうな会社の情報がほしい」とのことだった。多分、私が「日本のコーヒー文化」について連載している雑誌を読んだだろう。
 それに似た内容のメールは前にも幾度かもらったことが、こんなに積極的なアプローチをしてきたのは初めてだった。その積極性につられ私も誠心誠意をもって返事を送った。私が良いと思うものを紹介し、それが良いと思われたことの喜びから、あらゆる情報を提供した。そして、相手はいきなりひとつのブランドを決め、来月末のオープンに間に合わせるように進めて行きたいと言った。「おいおい、ちょっと待ってよ」。どんなに簡単な店を始めるとしてもそれはない、と思った。特に外国のチェーン店にギャランティを払って輸入する時はなおさらのことだろう。
 推進力と言う前にかなり素人だろうと相手のことを調べたら、韓国でも指折りの大手出版社の代表だった。事業の多角化を図るためにコーヒー業を選び、多分コーヒーというものを容易い商売だと軽く見たのだろうが、韓国でそのような店をオープンするまで2カ月かからないのが普通だと知人はいう。しかし、それは単にコーヒー業界だけでなく、一般の会社や一般人の生活でも現れる。
 「前もって」何かをするときに、その「前」というのが日本人と韓国人とはかなりの差がある。日本では1年または1カ月前から準備するのを、韓国だと6カ月、10日前から準備をし、間に合わせる。時と場合によって、それぞれ良い結果も悪い結果も引き起こす。短期間で何かを成し遂げる力と、長い年月をかけて成し得ようとする間には良いとするものもそうでないものもある。そこでそれぞれの良いとするものが文化につながるのであろう。
 結局、その人はその後1カ月ほどで国内チェーン店をひとつオープンした。彼の商売の興亡そのものには興味がないが、短期間で作り上げてしまうことに対して少し不安を感じてしまうことも事実である。