(2004/6/14プロパン・ブタンニュース)
(ピアニスト・本名=岡山聡子) |
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肌色の選択 日本は美白先進国だ。数年前までは真っ黒に日に焼けた女の子もいたけど、今では誰もが白い肌に夢中だ。シミとそばかすが出来るのを何よりも恐れる。そして、その心理をうまく利用する化粧品会社が高級美白ラインをこぞって出している。パリに暮している私から見ると少し異様な光景だ。 パリの人達は日傘をささない。それどころか冬が長く、いつも重たい鉛色の雲がたちこめているので、春になると皆張り切って日光浴を始める。夏には肌をじっくり、きれいな小麦色に焼き上げるというのがステイタスなのだ。近年フランスでも紫外線の悪影響については随分言われているけれど、家族や恋人とのバカンスを何より大切にする人達に肌を焼くなというのはまったくナンセンスというものだ。小麦色の肌にキャミソールを着こなす健康的なパリジェンヌやゴールドのアクセサリーをさらりと焼けた素肌につけるマダムを見ると私の心は大きく揺れる。真っ白な肌をにょきっと出して夏の服を着るなんてここでは少し恥ずかしい。私も思いきり太陽の光を浴びて夏色の肌にしてみようかなと思ってしまう。 ところが今、日本に戻って数週間。こちらの美白ブームに乗せられて少し日焼けしてしまった肌を懸命に白く戻そうとする私がいる。シミを薄くするというビタミン剤を買い込み、雑誌を読んでは最近の美白クリームをチェックする。もちろん堂々と日傘もさしている。 自分でもこの気持ちの変化に驚き、環境というものは恐ろしいとつくづく思う。今の時代紫外線が肌によくないと言う事は誰でもが知っている。すべての事に共通するのかもしれないが、自分がどう在りたいのか、何が好きなのか、情報が氾濫する今、自分に本当に似合うものは何かを見極める事が大事だと思う。 私の場合、小麦色の肌に白いワンピースというのにもあこがれるけれど、やはりステージでピアノを弾く私には似合わない。清楚なイメージを保つためにも当分は色白をキープする事にした。 |