(2003/11/3プロパン・ブタンニュース)
(はたの・もとこ=シナネン経営企画部広報室 社内報『えんゆう』編集長) |
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怖さの先には喜びが忘れられない思い出がある。私は企業の女性広報担当が集まる会“ウーズの会”に十三年間在籍し、会社ではできない貴重な経験を多くさせてもらった。その一つの十周年誌編纂で、編集する怖さと喜びを知った。 ウーズの会は、(株)宣伝会議が活躍の期待される女性広報担当者を育てることを目的に開いた三カ月講座「女性のための『実践広報術』」で知り合った面々が、この出会いを大切に講座終了後も共に学んでいこうと発足された。ウーズの会に代表者はなく、事情があってやめたとしても、いつでも復帰できるような自由と暖かさを持っていた。だからメンバーは、みんな主体的で活発な活動を行っていた。 会の先輩二人とともに十周年誌を担当し、編集を任された。ゼロからはじめる本格的な編集は始めてだった。会社の仕事が終わってからの作業が多いうえに、段取りが上手にできず、タイトなスケジュールとなった。先輩たちは一緒に徹夜して手伝ってくれた。また印刷業者の社会福祉法人東京コロニーさんも、最後のぎりぎりまで私の原稿を待ってくれた。そして十周年記念パーティー当日になんとか完成した。できあがり具合を編集者が確認するという当たり前の作業がないまま、直接会場に届けられた。 仕事を終えたあと、不安を抱えながら会場に到着すると、もうすでに何人かが読んでいた。体がこわばった。怖かった。なにか言われるのではないかと思った。そこに先輩の「あら、良くできているわね」との一言が聞こえてきた。驚いた。そしてほっとした。力が抜けると同時に、急に目頭が熱くなった。喜びが沸き起こってきた。 今の私には、この当時より制作の過程を大切にする余裕も生まれている。でもあいかわらず、発行の瞬間に怖さはやってくる。人が自己表現するには勇気が必要だが、やってみると編集は自己表現そのものだった。この怖さは永久になくならない。なら、もうただそっとしておくことにした。その先に喜びが来ると信じて。 |