(2003/10/27プロパン・ブタンニュース)
(ピアニスト・本名=岡山聡子) |
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秋のお風呂で想うこと?何だか最近やたらと旅行雑誌が目にとまる。“紅葉の京都・鎌倉”、それから”楽園のハワイ”だって!う〜ん、これもいい。思わず数冊買い込み家に帰り、お風呂に入りながらゆっくり眺める。やっぱり温泉はいいな、スパ(エステ)もトライしたい、などと早くも頭はそちらへ飛ぶ。この瞬間こそが最近の私にとって最高のリラックスタイムだ。というのも今年の夏は予定していたバカンスに行けなくなってしまい、パリでずっと過ごした私の夏は燃え尽きないまま終わったからだ。 私は昨年、北欧の音楽でCDデビューを果たしたピアニスト。二年半ほど前からパリでレッスンを受けていて、日本とフランスを往復する日々を送っている。最近は少し慣れてきたことだし、コンサートが終わった八月に旅行でもしよう、とパリに戻った。が、今年のヨーロッパの猛暑ぶりは私の外出する気力をあっけなく打ち砕いた。 ほとんどのフランスの家にクーラーはない。もちろん電車にも。暑い日はカーテンや木や鉄で作られている外窓(ブラインドみたいに風が通る)を閉めて部屋を暗くする程度という人たちだ。どんよりとした冬が長いためか、きっと暑いのは大歓迎なのだと思う。けれど、さすがに四〇度を超す暑さは耐えられなかったのか、クーラーは売れたらしい。 そんな中、暑い家に住む私が見つけた涼む方法といえば、水を張ったバスタブの中で今年旅行するはずだった暑い国エジプトの探検記を読むことだった。その昔、エジプトを征服しようとしたナポレオンが慣れない暑さの中でどれほど苦労をしたかということも書いてある。 これよりはずいぶんましよね、と慰められたが、やっぱり猛暑の中での水風呂より紅葉を眺めながらのんびり入る日本の温泉がいいなと思う。 ひんやりとした秋の夜。体が温まった後にはブラームスの『8つのピアノ曲 op76』を聴きながらリラックス、というのはいかがですか? |