(2003/10/13プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)
混血−歴史の中に生きる
 久しぶりに韓国に帰ってきた。日本で留学を始めて九年になるので、たまに帰国すると色んなものに驚かされる。しかし、驚かされる対象はそれが初めてなわけではなく、昔も今もそれ自体は変わっていないのに、私だけが不思議に思えるからそれがまた不思議だ。
 ある日、テレビをつけたらある女優が記者会見を開いていて、涙ながら話していた。離婚でもしたのかなと思いながら、あまりにも泣くので、内容をよく聞いてみると自分がハーフであることを公表し、隠し続けてきた辛かった日々を告白していた。日本ではハーフの外見的な利点から、むしろ得する社会なのに。韓国では、ハーフのイメージが決して良くない。また、国際結婚ほど難しい行事もない。要は血を混ぜることが良くないのだ。多分ハーフのイメージは、米軍基地の近くに居た娼婦たちの子供からでてきたのだと思う。
 戦後、米軍基地の娼婦が私生児を生むと、生まれた子供は人間以下の扱いを受けた。歴史上侵略されることが多かった土地柄なので、犯された女は命を絶つことを最高の美とされてきた。それゆえ、お金を稼ぐために自らが体を売ることは許されるものではなかったのだ。だから、生まれてくる子供は最悪の生産物なわけで、生きていても周りからいじめを受けて当たり前のようなものだった。それが今に続いている。
 多くの韓国人は歴史の中で生きている。歴史の半分以上が外部からの侵略を受け、命よりも大事に思う自分の名字(家紋)を汚さぬよう女は犯されると命を絶つことでそれを守ろうとした。そうでないと、生きていても生きている間は何を言われ、何をされるか分からないから、むしろ死を選んだ方が良かったのだ。
 しかし、今は両班ヤンバンという身分もいなければ、刀や矢をもって侵略するものもいないのに、二人の人間が愛して生まれてきた子供が自分の立場を誰かに説明し、了承を求めている。多分韓国を離れていなければ、私もあの記者会見を見てうなずいていたかもしれない。

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