(2003/10/6 プロパン・ブタンニュース)

波多野素子
(はたの・もとこ=シナネン経営企画部広報室 社内報『えんゆう』編集長)
“闘う広報”に挑む社内報
 当時、広報機能強化のため、担当役員は全社員向け社内メッセージで「“闘う広報”になれ。まずは社内報から」と力説した。社内報『えんゆう』の編集長としての三年。「なぜ、自分がそこまで取り組む必要があるのか」自らに問いかけ、戸惑い悩みつづけた。
 広報在籍十三年目。女性社員ひとりに社内報の全権を委ねた決断に対し、当時は疑問視する人もいた。当初、私の任期は一年。「好きなようにやってみろ」と指示された。“闘う広報”の意味と私に任せた意図を考える日々がスタートした。
 戦後の日本企業における広報活動は、高度経済成長のなか『守りの広報』とよくいわれる。自ら情報公開を積極的に行うことよりも、何かが起きたときにガードする役目を最優先してきた。こんななか社内報も経営や仕事に関する内容より、円滑な人間関係をはかるための趣味紹介など、メッセージ性の弱い企画が多かった。
 『えんゆう』の刷新では、“闘う広報”をめざし、社内報自らが変わったことを印象づけるように心がけた。モノクロをオールカラ ーにし、グループ報の位置付けを明確にした。そして編集方針『全社員参加型』のもと、年四回で延べ千二百人の社員に登場してもらった。
 特集に力を注いだ。「マンネリズムからの脱却」「シナネングループの常識は世間の非常識」などの問題提起を行った。とくに会社の非常識二百以上を掲載したことに対する反響は大きく、アンケートには「自分が普段思っていた内容と全く同じ」「社内報の存在意義を感じた瞬間だった」という意見が多くあった。
 時代は企業が情報公開を進め自ら体質強化することを求めていた。したがって、それにともない社内報も変える重要性を認識した。そして二年目にはB5判からA4判にし、年間で三十二nを増やすことにした。
 社内報の新たな価値の発見と創造の三年間、編集責任者としての使命に取り組んできた。自信をもってそういえる自分がいる。自分も変わったのだと驚いている。
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 今週から「Essay」と題して女性のリレーエッセイを始めます。社内報編集長、通訳、ピアニスト、LPG販売促進や営業支援など多彩な職種で活躍中の女性が登場します。ご期待ください。