(2002/7/15 プロパン・ブタンニュース)

<解説>  「JAサンテクノス」 
バルク戦略で強者連盟

全農とちぎとサイサンの業務提携会見には、全農とちぎ側から小出昭夫本部長、田村宏志副本部長、バルク新会社・ジェイエイサンテクノス(JAサンテクノス)の山本剛社長など9人、サイサン側から川本武彦社長、丸山直義、倉持充男両常務など5人、合わせて14人が出席し、この提携が持つ意義と両者の意欲のほどをうかがわせた。
 卸売業者の全農とちぎは特に、7年7月の栃木くみあい燃料サービス設立、昨年4月の全農とちぎへの改編と続く中で、小売機能にまで及ぶ改革プラン(配送・保安・生活提案)を懸命に推進中であることを強調。県内に厚い販売基盤を構築しているサイサンとの強者連盟(相互協力)でこれを加速・拡充し、激化する競争で優位に立とうとする姿勢を印象づけた。
 小出本部長は会見あいさつで、「商社系・サイサンとの新会社の設立は、われわれにとって“革命”である。現在進めている“五つの改革”(事業・業務・組織・物流・意識)のうち、アライアンス戦略でもある事業改革の中核をなすものであり、サイサンという良きパートナーを得て実現した。全国のモデル事例となるよう成功させたい」とあいさつ。
 これに対し、川本社長は「私も気持ちは一緒、ぜひ成功させたい。当社の栃木県での販売は40年になるが、全農とちぎの前身、栃木県経済連とは20数年前から受託充填などを引き受けてきた。今回の提携はバルク供給がメーンだが、将来的にはシリンダー、保安面でもさらに連携を強め、もっと合理化を徹底したい」と述べ、連携強化に向けエールを送った。
 また、山本社長は「規制緩和で誕生したバルク供給は、業務用から家庭用まで急ピッチで拡大中であり、将来LPガス供給の大宗となるのは必至。新会社の発足を機に、いっそう普及促進と配送コストの低減に努め、社会に貢献する事業体を目指したい」と抱負を語った。
 全農とちぎとサイサンとは、20数年前から充填などで受委託関係にあった。全農とちぎがまずサイサン・那須(貯蔵能力30トン)、次いで同・今市(20トン)に充填を委託。今回はこれを踏まえて11年2月、全農とちぎ側がサイサン側に全農とちぎ・宇都宮(35トン)の利用を提案。これが発展し、13年10月にシリンダー充填、バルク供給、配送・保安を領域とする基本合意書となり、この7月1日には、バルク共同会社としてJAサンテクノスの設立にいたった。資本金5千万円の出資割合は全農とちぎの出資会社・栃木くみあい燃料サービスが52%、サイサンが48%。
 一方、サイサンは住居区域内にあり手狭ともなっていた宇都宮(同25トン)を廃止。すでに、バルク方式(2.9トン2基)によるオートガススタンドとしてリニューアル・オープンさせた。今秋には支店事務所もオープンさせる。
 JAサンテクノスは全農とちぎ・宇都宮の隣地に敷地2530平方m(全農とちぎ所有)を確保。今年8月中旬完成、6月2日開所を目指してバルク専用基地の建設に入っている。主要設備としてはプロパン用17.5トン貯槽2基、受入1カ所、払出2カ所などを設置。払出能力は毎時20トン(3トンローリー積み込み時)となる予定。
 全農とちぎ・宇都宮は法令上の貯蔵上限が現在の35トンであり、しかも出荷が現在すでに上限(月間1000トン)に近い年1万トン規模にある。バルク専用基地の建設は、両者がバルク戦略を主体的に展開する狙いで建設したが、他方ではこうした制約もあって別法人(JAサンテクノス)で専用基地を設ける方法を選んだ。
 サイサンは栃木支店管内で520基のバルク供給を手がけており、今後年150基以上を新設していく計画。支店下にある那須、今市、矢吹(福島県、40トン)はいずれもバルク出荷対応済みで、ローリーは8月には2台体制にする。一方、全農とちぎは39基で、14年度中には100基に乗せ、16年度までの3年間で200基とする。
 JAサンテクノスはこれらのうち、県央・県南地区のバルク供給先を対象とし、計画では14年度に配送350件、取扱数量1300トン、ローリー2台とし、15年度には490件・2600トン、3台体制(1台追加)、16年度には630件・3200トン・4台体制(同)とする。配送システムはバーコード共通化を図る。
 提携両者の取引先は全農とちぎが13単協・5万戸、サイサン栃木が直販3万戸を含め5万5千戸、計10万5千戸あり、栃木県市場57万戸の2割弱に及ぶ。