地に足つけた取り組みで春の訪れを
エルピーガス振興センター理事長
日本LPガス協会副会長(技術委員長)
コスモ石油ガス会長
武内正明氏

ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <199>

 コスモ石油ガス会長の武内正明さんは、(財)エルピーガス振興センターの理事長である。そして日本LPガス協会副会長で同協会の技術委員長もつとめている。また、高圧ガス保安協会の監事でもある。業界団体の枢要な立場にいるので武内さんのこの方面でのお仕事ぶりを聞けばLPガス業界が今、どっちを向いて何をしようとしているかが見えてくる。
 武内さんは、昭和48年に京都大学大学院工学研究科博士課程を修了して丸善石油に入社、以来コスモ石油の本社や製油所等、技術部門を中心に仕事に従事され、平成14年にコスモ石油ガスの社長として、LPガス業界に身を転じ、同17年にはコスモ石油ガスの会長になり、今日に至っている。このキャリアからも明らかなようにLPガス業界では数少ないサイエンスマインドの持主である。
日協の技術委員長として
 日本LPガス協会の技術委員会には需要開発、安全、品質の3部会がある。需要開発部会では、主に日団協のスマイルプロジェクトやコラボ等と協同して活動している。日団協が出展した危機管理産業展に協力してガスエンジン発電機の展示、実演に工夫をこらして緊急時に強いLPガスをPRした。また、小冊子「平時から地震災害に強いLPガスの確保」を発行して県、市町村の自治体に配布した。
 安全部会では協会の自主規準の「低温LPガス設備保守点検管理指針」を刊行した。今後、会員会社で運用実績を積み、将来は規格化に繋げることを目指している。
 品質部会ではLPガスの品質に関する基本的な事項の調査・検討が目白押しの状態である。その主なものは、LPガス中の含有成分に関する広範な分析・調査や硫黄分など成分に関する規格・規準などの改訂検討や分析方法の検討等である。これらからは、LPガスの品質に関する関心が時代と共に高まって来ている事を、実感していると言う。
 さらにオートガスの品質に関する調査・検討をワーキンググループ体制で実施している。そこでは、石油系自動車用燃料のサルファーフリー化に対応したLPガスに対する評価を、実施しようというものである。
振興センター理事長として
 振興センターは今、大きな節目を迎えている。センターは昭和64年に設立され平成13年ころまでは委託事業が中心で、助成事業は小さかった。平成13年ころまでの事業予算は多い年度で30億円ほどの規模だったが、漸次減少して平成14年度から最近までは、20億円前後の規模で推移して来ている。同14年以降は委託事業の減少を補完する形で補助事業が急増して来た。
 主なものは石油ガス充填所統廃合支援事業や、高効率給湯器導入支援事業などで、これらにより補助事業費は15億円程に急増した。
 この補助事業が19年度からは、公益法人改革を契機としてセンター事業から外されることになる。これらの補助事業の実施事業体については、現在日団協にて検討をしてもらっている。
 いずれにしても、センターの予算規模は、19年度からは一気に縮小せざるをえず、これらへの対応として中村紘一専務理事はじめセンター職員の皆さんには、センターの設立趣旨を維持 ・継続していくべく積極的な取り組みをお願いしているが、併せてオフィススペースの縮小などの管理費節減策についても鋭意実行に移していく予定である。
WLPGAのボード・メンバーとして
 WLPGA(世界LPガス協会)は、パリに本拠をおき、ヨーロッパを中心に活動していたが、近年はLPガスの世界的な普及を図ろうと世界各地に積極的にアクセスしている。昨年、規約を改定してその姿勢を鮮明にした。
 この協会のボード・メンバー(役員)は、会長以下9人で構成されている。日本のメンバーは9社4団体が加盟しており、その中で振興センター理事長がボード・メンバーに入っている。毎年9~10月に世界各地で分科会・役員会・総会そしてフォーラムを開催する。今年は先月、シカゴで開かれた。同時に行われたLPガスに関する国際技術会議には数次にわたる審査を経た40篇の論文が採用され、発表された。日本からは8件の発表があり、いずれも日本の高い技術レベルの紹介に大いに貢献いただいた。
 また、ポリカーボネート製のカラフルな15㌔㌘のLPガス容器が展示され人気を呼んでいた。来年の総会・フォーラムは、南アフリカのケープタウン、再来年は韓国開催が検討されている。韓国開催の折りには日本の積極的な協力と多数の人々の参加を要請された。
今は「早春賦」の気持ちで
 対談の終わりに武内会長は、今は「早春賦」の歌詞「春は名のみの風の寒さや 谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと……」の気持ちだとのこと。業界状況はCPの高騰と激変、エネルギー間競争の激化など、正に今は冬。また、センターの環境は、制度改革という嵐の中、いずれも厳しい状況下には変わりない。
 したがって今は時にあらず。しかし、やがて来るべき春に謳歌できるように、今は為すべき事をしっかりとやろうではないかとの気持ちを「早春賦」に託したのであろう。  

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