品質こそ我らが命(いのち)
リンナイ社長
内藤 弘康氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <198>

 リンナイの内藤弘康社長は、昨年11月に社長に就任してちょうど1年が経過した。社長就任時にいままではシェア確保が最優先されてきたが、今後は高付加価値商品で勝負したい。例えば給湯器ならエコジョーズ、これによってお客さまにとって、より必要な商品が提供できる。再来年にはスターリングエンジンを搭載した家庭用給湯器・コージェネレーションシステムを上市する予定である。このように新技術開発に力を入れて収益重視の経営に転換する。
 「品質こそ我らが命」。この標語はリンナイの各職場に掲げられている。創業以来品質重視を貫いてきたが、ガス器具の安全問題で今、業界は大揺れに揺れている。社員一人ひとりが「我らが命」を肝に銘じて品質保証に取り組まねばならない。
 そして「風通しのいい企業風土」を社員皆で作って行こうと訴えた。リンナイ5代目社長は就任1年目にして伝統の「リンナイ・イズム」にさらに磨きをかけてリンナイの歴史の新たな頁を切り開き始めている。
わが国の暖房は立ち遅れている
 わが国の暖房は、先進国として立ち遅れている。欧州ではガスを燃焼して湯を作り、室内に回して暖房する。元止め湯沸器は、わが国では100万台ほどの市場であるが、欧州では室内に排気ガスを出すから付けられない。中国でも同じ理由で大都市では禁止している。韓国もオンドルという床暖房文化があって室内に排気ガスを出さない。日本では、炭まき時代からの暖房意識を払拭できずに排ガスを室内に出す暖房スタイルである。
 洗濯物の乾燥もわが国ではマンションのベランダの洗濯物を目にするが、欧州では見られぬ風景である。韓国でもワールド・カップ・サッカー開催以来この光景は少なくなった。中国もオリンピックの開催で前進するだろう。日本では花粉や黄砂が飛び、わが国固有の梅雨の長雨もあるから浴室暖房と共に乾燥機がある生活スタイルが出現してよいはずである。
エコジョーズ+浴室暖房・乾燥機・ミストサウナ等のセット販売
 リンナイ・グループはアメリカ、中国をはじめ東南アジアや韓国、オーストラリア、ニュージーランド等海外法人14社で国際会議を行っているが、日本ではコンデンシング・タイプの給湯器(エコジョーズ)の販売状況はと訊ねられると、普及率が低く返答に窮していた。最近、ガス業界の努力で普及し出してほっとしている。
 世界のコンデンシング・ボイラー(エコジョーズ)の普及状況は、ベルギー、オランダ(約90%)、ドイツ(約80%)。イギリスでは新築の家はこのタイプでなければ付けらないと法律で規定している。韓国、中国も同様に力を入れ始めた。
 エコジョーズにするとガス使用量が減ると言ってその普及を躊躇する向きもあると聞くが、それは認識不足である。ガス代を大幅に増やさずにエコジョーズ+浴室暖房、乾燥機、ミストサウナなどのセット販売の好機である。それを実施してお客さまに喜ばれている。当面、高効率の給湯器による暖房に引きずり込んでいくことが肝要である。この努力を怠るとエコキュートになり、そのお客さんは昼間の高い電気料金で追いだきをしなければならなくなる。
スターリングエンジン・コージェネの開発
 リンナイはスターリングエンジンの基本特許を持つアメリカのINFINIA社と、実用技術を持つオランダのENATEC Micro-cogenと提携してスターリング・エンジンを家庭用給湯暖房機に組み込んだコージェネレーション・システムの開発を進めている。
 スターリングエンジンは、効率が高く、その良さは原理的には分っているが、今日まで一般民生用に実用化されていない。それは加工が難しく製造が困難だからである。その点、リンナイは、グループ会社のリンナイ精機が精密加工・精密組立技術に優れている。同社はガスコックや電磁弁などミクロン単位の切削加工を得意としている。そこでリンナイは、07~08年度にはこの製品を市場に投入するべく開発に拍車をかけている。
 目指す製品は、1kw~500wの可変式で総合効率90%、メンテナンスフリー、価額はエコウィルを下回るようにしたいとしている。そのために耐久テストを進め、コスト面でもさらに一段の詰めに取り組んでいる。完成すれば燃料電池が本格化するまでの製品として、エコウィルと並んで魅力的なものとなる。
対談の終わりに
 アメリカ、中国をはじめ東南アジアや韓国でもリンナイブランドは浸透して、オーストラリアやニュージーランドには優良な現地法人が育っている。そして海外のガス器具メーカーとの交流が多い内藤社長は、日本のガス器具は機能的にも品質的にも世界レベルで最上位にあると言う。
 アメリカは貯湯式の市場だったが、瞬間湯沸器に目覚めたようだ。リンナイの24号クラスの単能器が故障も少なく人気を博している。リンナイ・アメリカ事務所は、瞬間湯沸器の販売に火が点いた、絶対に売れると報告してきている。今は輸出しているが、いずれは現地生産を考えねばなるまい、と内藤社長は対談を結んだ。 

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