ガスの田島からお湯の田島へ
田島社長 
田島裕之氏
ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <161>

 株式会社田島の田島裕之社長は、お父上・田島茂会長が始めた会社の2代目社長である。昭和61年に入社して20年が経過した。平成15年、社長に就任した46歳の新進気鋭の経営者である。田島は、東京・立川市に本社、北は埼玉県狭山市、南は東京都町田市、西は高尾山の入り口、そして東は環八通りまでが営業区域である。この地域には230万世帯があり、LPガス消費世帯は50万世帯である。その50分の1に当たる1万2,000世帯が田島のLPガス供給世帯である。
 売上高は37億9,000万円(平成17年度7月実績)、うち20億円強がガス機器、床暖、空調設備、配管工事、水道工事などLPガスに限らず都市ガスであれ、電気であれエネルギーを使うための機器、設備工事等である。LPガス販売10億円、その他である。これに従事する従業員は社員130人、LPガスに従事するもの40人、LPガス以外の機器・設備・工事等のもの90人。うち10人ほどは管理の仕事だからこの部門の実質従業者は80人である。この他に常傭協力者まで数えると300人くらいになる。
業態を厚くする
 「ガスの田島からお湯の田島に変えていくのだ」と朝礼で繰り返し述べるが、頭では分っても現場でお客さまにどう語りかけ、どう行動するかは、お客さまの感じ方もあって難しい。やるのは現場の一人ひとりで、付いて見ているわけにもいかないので結局、社員のセンスを信じることにしている。社員がコンビニの店員みたいになったらお終いだ。当社の営業は幅広く要求される知識、技術、知恵はあまりに多すぎる。全部並べて「お客さま、お好きなものをご自由にご採用下さい」はありえない。お客さまを区別して、2つか3つをパックにして「だき合わせ販売」ならぬ「組み合わせ営業」をある所属長が始めた。そうしたら自分と似た人がお客さまだと言う営業マンが現れた。これは業態を厚くしようという会社の意図が漸く浸透してきた発言だと嬉しくなった。
国境を壊してしまえばよい
 LPガスの直売という営業スタイルには1位があって2位がない思考方法である。それ故に直売志向の会社は城壁を高くして「国防費」に金もエネルギーも使い過ぎる。そんな国境は壊してしまえばよい。
 よく「当社のお客」といってお客さまを自分の所有物みたいなことを言っているのを聞くけれど、お客さまの方はそんなことはちっとも思っていない。それより「自分はこれとこれには自信があります。足りない所はあの人があれとあれ、それでも足りなければ、あの会社の人を紹介します」。ガスのお客さまにも、オール電化のお客さまにも、水道工事をしたお客さまにも客層を拡大できるのである。これがLPガスの田島ではなく、「お湯の田島です」と標榜する意味なのである。かくて業態を厚くすることができる。
コスト削減の重要性
 売り上げの大きさよりコストの小ささが重要なことは言うまでもないが、その大半である人件費から着手するべきではないと思う。1日に10軒しかできない作業をどうしたら12軒、13軒できるように挑戦することが大切と思う。また声の大きいうるさいもの順に取り上げるものでもない。何が重要か、どれが幹で、どれが枝で葉であるか優先順位を決めて1つひとつ着実に処理して行かねばといって自戒している。
購買行動で感情の沸点が低い
 人口構成が変わった。気候も変わってしまう。エネルギー分野も斑(まだら)でありながら、それだけではなく異なったスタイルの規制ができ始めている。国際関係、情勢も不安定である。また、関東に災害が来ていない。そろそろ足元が危うい気がしないでもない。そして、ある意味では豊かになって大概のものは、ある程度まで買えてしまう。不景気と言いながら今の方が立派なものが安く手に入る。ある意味で充足してしまっていて消費社会に突入した感がある。客の数が増え、販売量が増している。われわれの仕事でも新しい機械、器具が売れる。だが、これまでの延長線上では考えにくい。今までの仕事のやり方と違うのである。お手本がないのである。
 とくに人口構成の問題は大きい。若年層がいびつな形で、その購買行動が著しく変化している。自分たちは子供のころ、100円玉を握りしめて悩みに悩んでから買い物したように思う。けれども今は子供も自分も含めていい大人も感覚的、直感的、衝動的に決める傾向が強いと思う。感情の沸点は低くなった。
これからの仕事の心構え
 そんな世相ではあるが、田島裕之社長は、これからの仕事の心構えとして①普遍的なもの(自然、科学、人情)②世間のルール(法律、マナー)③自分(個人の美意識、信条)の3カ条を挙げ、図を書いて説明し、その優先順位は①、②、③の順だと述べた。 

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