ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2005/6/6プロパン・ブタンニュース)

伊丹産業会長
北嶋政次氏
ACU60万軒目はどなた

伊丹産業の北嶋政次会長は、同社のLPガス総合管理システム「ACU24」を設置したお客は今年中に60万戸に達すると誇らかに話した。このシステムの運用を始めたのは昭和61年3月だった。平成14年2月には「ACU24」を取り付けたお客は累計50万戸に達した。
 単純に計算すれば、1年で3万1,250戸、1カ月2,600戸、1日当たり86戸というハイペースで取り付けが進んだわけだ。50万戸到達時に北嶋会長は、50万戸は通過点に過ぎぬと言って更なる前進を指示した。そして平成18年2月までに累計60万戸の目標を示した。その目標の60万戸は期限前の今年中に達成が確実視されている。
 「ACU24」の普及がこのようにハイペースで進んだわけを北嶋会長に問うた。
ACUの6つの効用と3つのシステム
 「ACU24」の効用とシステムを簡単に説明しておこう。効用は@容器のガス残量が一定量になると警報信号を総合管理センター(伊丹産業本社内に設置)に送信、これによりガス切れを完全防止Aガス配送の合理化=残量警報にもとづいて配送するから配送・充填コストを大幅に低減B検針業務の合理化=毎月一定の日時に自動検針しセンターに送信、検針値を自動入力し、請求書も自動的に発行C消費者保安の強化=ガスもれ警報器が警報を発すると自動的にセンターに送信、センターはこれを受け迅速に対応するから事故を未然に防止できるD低廉な運転コスト=端末発信方式だからランニングコストが割安Eどこでも利用可能=加入電話回線を利用しているからどこでも利用が可能。
 システムは、@残量管理システムA自動検針システムBガス漏れ24時間監視システムである。
「漏れたら止める」が基本
 昭和61年、ACUがスタートしたと同じころ通産省(現・経済産業省)はマイコンメーターによる保安確保の姿勢を打ち出した。ガスの流量や使用時間などが設定値を超えれば自動的・機械的にガスを遮断してしまうマイコン方式と、一方、異常があればセンターから確認の電話を入れた上で、消費者が留守の場合や対応できない場合のみ担当者が人為的にガスを遮断するACU方式。両者はそもそもの発想のスタートから違っていたのである。
 マイコン方式は、実際にはガス漏れでないのにしばしばガスを遮断して客にとっては「ガス切れ」同様の状態を惹き起こした。ACU方式は、警報器とメーターを連動させてガスが漏れたら止める、漏れないなら止めない、という基本ポリシーを貫徹している。
 かくてお客さまにとっては不要なガス遮断を排しながら事故ゼロの実績を続けた。
スケールメリットが成功のカギ 
 集中監視が成功するかどうかのカギはスケールメリットにある。普及率が50%ではかえって手間がかかる。取り付け可能なお客には一気に普及させようという方針で臨んだ。そのためには販売店にもお客にもできるだけ負担をかけないようにしなければならない。工事代はとらず、ACU機器も無料にして、警報器のリース料として月々320円を消費者からいただいている。しかし、伊丹産業は自社で多額のコストを負担した。ACUをやるために毎年10億円、それも1年や2年ではない。ずっとまかない切れるのか、正直言って内心心配した。もしやりそこなったら伊丹産業はどういうことになるだろうかと。途中であやまって(失敗して)みなさい。格好がつかない。それだからACUは素晴らしいもんだと販売店にも言い続けて来たが、実は自分自身にも言い聞かせていたのである。今、言えることは社員も販売店の皆さんもACUは事故がない、ガス切れがない、合理化効果が大きい、そしてコストが安い、とシステムの素晴らしさを理解して取り組んでくれたことだ。
社員を耕し、お客さまを耕す
 プロパン事業も百姓と一緒なんだ。決められた田んぼしかない。土作りですよ。社員を耕し、販売店さんはお客さんを耕さねばならない。しっかりやらないと電気に食われてしまう。社員を鍛え、会社の足腰を強くしなければならない。伊丹産業は、ガラストップこんろも床暖房もエコジョーズもエコウィルも売ってガスのパイプを太くしようと懸命である。それもこれもACUがあるからできるのである。
「ナリケンがゆく」の結び
 「ナリケンがゆく――ウエーブ・風――話題と肖像画」と題して平成13年12月3日付プロパン・ブタンニュースから今日まで3年半にわたり毎週LPガス業界の著名人とのインタービュー記事を掲載してきた。
 本号の北嶋政次氏で150人の方々に登場ねがった。業界の最長老で会社の足腰を鍛えよと強調される北嶋政次氏を「結びの一番」としてこの連載記事にピリオドを打つことになった。
 いま目をつぶると登場願った方々とその人を生み育(はぐく)んだ風土や景観が思い出され目裏が熱くなる。
 暫くの充電期間を経て再びこのような連載記事を書くことになろうが、オーソリティーが言ったことを鸚(おう)鵡(む)がえしに恰も金太郎飴のような記事は書きたくない。LPガスの文化を取材し、報道したい。





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