2004(H16)年7月26日(月曜)第2585号
新潟・福井豪雨
救援・復旧活動に奔走 泥にまみれて昼夜分かたぬ点検

 13日の新潟・福島両県に続いて、梅雨前線の停滞により18日、福井県も集中豪雨に見舞われた。集中豪雨によって特に新潟県中越・下越地方、福井県の福井市、鯖江市、美山町、今立町の地元LPガス関連企業やその社員、加えて数多くの消費者が被災し、家屋の倒壊やライフラインの寸断などのため避難生活を余儀なくされている人びとも多い。新潟・福井両県のLPガス業界は大水が引くと同時に、泥にまみれながら流出容器の確保や設備の安全点検で昼夜を分かたぬ活動を展開している。さらに両県には、全国各地から業界関係者が被害実態調査や救援を目的に続々と現地入りしており、その救援・復旧は被災地にとって日に日に心強いものとなっている。
豪雨被災地 現地ルポ
新 潟
 牙をむいた濁流が家をなぎ倒し、町を飲み込む  。記者は15日に被災地に入り、被害が深刻な中之島町、三条市を取材した。
温かい食事待つ被災者
 【中之島町】
 中之島町は19日午後8時現在死者3人、住宅全壊15棟、半壊139棟、床上、床下浸水512棟を出すなど被害の大きい地域だが、15日の時点では避難勧告が一部解除となり、避難所生活を余儀なくされた人の数も少なくなったようだ。
 しかし、梅雨前線が新潟地方に停滞しており、引き続き警戒が必要なため、避難所となった中之島町民文化センターでは不安な表情を浮かべて過ごす人の姿が目に付いた。また、一部交通規制が解除となったため、家屋の片付けに向かう人が相次いだ。
 避難所の食糧支援はLPガスなどの火を使う食糧が提供されず、被害の少ない近隣の地域からおにぎりやパンなどを調達していた。

町工場が被害
泥は30〜40aにも
 【三条市】
 三条市で被害が大きいのは信濃川支流の五十嵐川が決壊した川の南側の地域で、川を挟んで向かい側は被害がほとんどなく、決壊した場所が明暗を分ける格好となった。
 被害の大きい川の南側の地域でも、濁流で家屋や車などが流された地域と、水位だけが上昇した地域があった。
 水かさだけが増したのはJR三条駅に近い北新保地区で、比較的道路も片付き、家屋に入った泥をかき出す作業もはかどっているようであった。しかし、同地区では数人の老人が行方不明となり、いずれも遺体で発見されている。また、地場産業の盛んな地域で、壊滅的な被害を受けた町工場などが数多くあるようだ。
 水圧で町全体が濁流に飲み込まれたのが、曲渕地区、月岡地区で、被災地からかなり離れた所から交通規制が敷かれていた。車を規制区域の外に止めて、徒歩で現場に向かうが、除水作業で道路の水はなくなっていたものの、至るところに泥が30〜40ab滞留し、歩くのにも支障をきたす状態であった。そのため、被災地を通る緊急車両や家屋の片付けに来ていた住民の車両がぬかるみにはまり、交通渋滞を引き起こしていた。
 水圧の強さを物語るのが、濁流に流された車が散在していることだ。水田の中に車が横たわるなど、あるはずのないところに流されていた。
 住民が家から運び出した家財道具は泥を被り、もはや家財の「財」としての意味をなしていなかった。家財道具と一緒に運び出したごみは異臭を放ち始め、下水道の匂いと交わり、何とも言えない匂いが立ち込めた。
 住民は必死に家屋に入った泥をかき出しているが、一向に泥はなくならない。「いつまで泥と戦えばいいのか」とぼう然と立ち尽くす人もいる。また、依然として梅雨前線が停滞し、いつ豪雨に見舞われるかわからない不安からも、住民の疲労やイライラもピークに達している様子だった。

福 井
 福井豪雨の被災地では地元LPガス業界による懸命の復旧活動が展開されている。本紙記者は19日に現地入りし、各業者の被災状況と復旧活動を取材した。

自宅の床上浸水乗り越え 消費者の安全を最優先

 三谷商事ガス住設部(福井市、秋山勲執行役員部長)と直販会社のクリーンガス福井(本社・福井市、秋山勲社長)は、19日午前8時に女性社員を含む両社の全社員がクリーンガス福井に出勤。同8時5分、秋山社長を本部長とする「災害対策本部」をクリーンガス福井内に設置した。
 浸水した福井市春日地区を18ブロックに分け、女性事務員と販売店担当の社員を除き、2人ペアを組んで安全点検を開始した。同日中に、全件の点検が終了したが、同地区で最も被害の大きかった、月見4、5、みのり4、西木田5については、19日に水が引かなかったため、20日から、社員が現地に入った。
 同社は、事務所などには被害がなかったが、三谷商事南福井充填所(花堂東1、30d3基、出光ホームガスセンター福井併設)と三谷商事本社(豊島1)の周辺一帯が通行止めになり、ガス以外の分野において何らかの支障をきたしたもよう。
 20日午前11時現在の顧客の被害は、福井地区が容器転倒11件、うち容器引き上げが1件、メーター交換が1件。鯖江地区が容器転倒1件。福井市内の一部の地区を除き、19日中に安全点検を完了させた。
 なお、19日は祝日であったため、情報収集など復旧活動に混乱が生じかねないとして、三谷商事ガス住設部の中田正弘担当部長を、福井県LPガス協会(下江守町)に配置させ、会員の情報収集に努めた。
 グロリアガス北陸販売(本社・福井市、小出純一社長)は、本社(成和2)や事務所に被害は無かったが、社員3人(鯖江市2人、福井市1人)の自宅が床上浸水し、販売店の社員3人(全員鯖江市)の自宅も床上浸水の被害があった。人的な被害は、同社、グループ、販売店ともなかった。
 19日、本社に社員を出社させ、すぐに顧客宅や販売店の安全点検を開始。鯖江市内は同日にすべての点検が完了したが、福井市内の一部は20日も引き続き点検中。
 福井ツバメ商事(本社・福井市、藤野拓三社長)は、本社、充填所、オートガススタンド(いずれも豊岡1)に被害はなかったが、福井市に住む1人の社員の自宅が床上浸水した。
 顧客先では、床上・床下浸水が計200件、そのうち、ガスメーターが20件、ガス給湯器が20件水に浸かった。19日に全社員が本社に出社し、同日中にすべての顧客の安全点検を完了させた。
 北日本物産福井支店(福井市、川東成人支店長代行)と直販会社のリビック福井(本社・福井市、西村忠尚社長)では、社員や支店(八重巻町)、リビック福井本社(加茂河原1)の事務所には被害はなかった。
 19日から安全点検を開始しているが、被害の大きかった市内みのり・月見地区については、20日終日かかると予測。
 販売店に関しては、20日午前9時45分現在で、被災顧客は福井地区が計138件、美山地区が計3件、その他の地区が計10件。だが、美山地区は道路状況から同日現在で、未点検の顧客もあり、同日にグループ社員2人を現地に派遣した。
 JA福井県経済連ガス課(福井市)によると、「当課は卸売り中心なので末端の状況は、20日午前11時現在では把握していない」。
 組合員宅の冠水や床上浸水などの被害があると予想されるが、被害の大きかった福井県美山町は、町内のほとんどの道路が一本道であり、町外から同町へは通行止めとなっているため、「美山町のほとんどの地区で手つかず状態、と聞いている」。
 なお、美山町のほとんどの町民のLPガスは、JA越前美山町(本部・福井県美山町)が担当しているという。
 あおい商事(本社・福井市、山本一雄社長)は、社員や本社(二の宮4)とガスエネルギー部(川合鷲塚町)の建物に被害はなかった。顧客に関しては、現在調査中。
 共和マルヰ(本社・福井市、清水昭信社長)は、本社(左内町)に被害はなかったが、倉庫(月見町)が浸水した。顧客先では、土砂崩れや床上・床下浸水による被害があったもよう。19日から、清水社長ら安全点検を開始し、20日も対応に追われている。
藤沢・海の家事故
神奈川県が再発防止要請

 神奈川県防災局工業保安課は8日、神奈川県LPガス協会(菊池鴻逸会長)に「不適切な設備工事によるLPガス事故の再発防止」について通知した。
 3日午後10時5分頃、藤沢市片瀬海岸の海の家で発生した事故を重視した。事故は誤って開放されたガス栓からガスが噴出し、着火・爆発で5人が負傷するとともに、厨房の一部を焼損したもの。
 通知では「今回の事故は幸いにも発災が夜間であったが、これが昼間の発災であれば海水浴客を巻き込んで大惨事となっていた可能性もあり、極めて憂慮すべき事態であった」などとし、設備士による不適切な設備工事が事故原因の一つと推定し会員に対し同様の事故の再発を防止するため、改めて保安管理の徹底について周知するよう要請した。
 不適切な設備工事の内容は▽可とう管ガス栓にホースエンドを取り付け、ゴム管を用いて固定式燃焼器(業務用こんろ)を接続していた▽未使用のガス栓には金属製の栓が取り付けられておらず、誤開放により直ちにガスが噴出する構造であった▽設置義務施設(料理飲食店)であるにもかかわらず、ガス漏れ警報器を設置していなかった――など。
集中監視普及率未達6社「認定」返上 
2年間で通信環境の変化が普及阻害

 認定販売事業者の集中監視システムの普及率に関する経過措置期間が今年3月末で切れたが、その条件の普及率70%をクリアできず、既に認定を取得していたものの今年になって認定を返上した事業者が東北で3社あることがわかった。この3社を含めこれまで認定を返上した事業者は6社に上る。
 認定販売事業者制度は、保安高度化を促すため保安に優れた事業者にインセンティブを与えるものとして平成8年のLPガス法の改正に伴って設けられた。これまで東北では青森2、岩手8、秋田3、宮城7、山形7、福島5、このほか東北経済産業局所管の3社を含め合計35事業者が認定を取得している。
 認定販売事業者は今年4月1日からは集中監視システムの普及率が70%以上でなければならない。しかしこの条件をクリアできないとして今年、宮城の2事業者、局所管の1事業者が認定を返上した。
 昨年までには秋田の2事業者、局所管の1事業者も返上している。この局所管事業者は今年4月に70%を超えることは無理だとして昨年9月に返上した。局所管事業者で認定を取得していたもう1社は所管が本省に変わっているので、局所管の認定事業者はこれでゼロになった。
地方自治体進む「LPガス」の明記
金沢市は省エネビジョンに

 最近、東海地区の地方自治体が行うエネルギー政策に、「LPガス」をハッキリと明記する事例が増えている。15年3月に岐阜県が発表した「県エネルギー長期需給計画」で「LPガスは県にとって重要なエネルギー」と位置付けられたのを皮切りに、今では市レベルにまでLPガスが明記されるようになった。中には都市ガスが強い地域であっても「LPガスは重要なエネルギー」と位置付けする事例も見られる。
 LPガス明記が増えた理由としては、@東海、東南海地震対策A自動車NOx・PM法による低公害車の推進――などが考えられる一方、15年10月に策定された「エネルギー基本計画」で、石油政策からLPガスが分離され、「LPガスは国民生活に密着した分散型エネルギーのひとつ」と定義づけされたことが大きい。
中国路
☆防犯チラシの配布で地域に貢献

 ユニオンフォレスト(本社・広島県呉市、森澤大司社長)は地域貢献の一環として検針や保安点検の時に呉警察署が作成した防犯チラシを訪問家庭に手渡ししたり、ポスティングで配布し、同署や地域の住民に重宝されている。
 最近、呉地区でも車上狙いや「おれおれ詐欺」など新たな犯罪が多発しており、同警察署でもチラシを作成して注意を呼びかけている。同市でのLPガスは市周辺部に多く、同社の顧客数は約6,000世帯に及んでいる。同社の社員ら15人が月1回の検針時やガス器具の定期点検の時に顧客が在宅の時はひと言「注意してください」と声をかけて手渡す。留守の時はポストに入れて帰る。
 同社は「地域密着」「顧客第一主義」「生活支援」を経営のモットーにしており、高齢化が進むなかでとりわけ家庭での事故には気を配っている。こうしたなかでほぼ2年前からホームセキュリティ ーの分野に進出するとともに、コンサルティングの業務も始めている。
 地元の高齢のある主婦からは「最近、知能犯の事故が増え、注意はしているが、こうした事故への備えの手ほどきや連絡事項などのチラシがあると大変助かる」と感謝されたという。こうした同社の地域貢献について地元紙も報じた。
北九州支部青年部会
小倉祇園太鼓で今年もPR
地域活性化にも思い入れ

 福岡県LPガス協会北九州支部青年部会(渡邉豊文部会長)は17・18日の両日、小倉祇園太鼓一色の北九州市で、紫川にかかる新勝山橋の橋上広場を貸し切ってLPガスのPR活動を行った。昨年に続き今年で2回目。対象を絞らずLPガスを一般消費者にアピールし、競合エネルギー対策にもつなげた。福岡県協の実演車も参加し、最新ガス機器を展示。調理実演でガスこんろの進化ぶりを通行客にPRした。
花開くウォータービジネス NGP新時代

 国内のウォータービジネスはここ数年急成長し、5〜10年後には1兆円から1兆5,000億円産業に伸長するといわれている。慢性的な水不足や水道水の水源となる地下水、河川の水質悪化(生活排水、環境ホルモン、産業廃棄物等)などが主な原因。LPガス業界はエネルギーボーダーレス時代の到来で、事業そのものの収益が低下する傾向にあり、流通改革や業務改善などによる徹底的なコスト低減に加え、ガス外収益(NGP)事業を積極展開することでマイナス分をカバーしようとする傾向が強くなっている。LPガス事業の強みは「地域密着」と「顧客密着」。この強みとともに、LPガス業界50年という歴史的な「信頼」があり、これまで培ってきた配送・輸送・点検網という「ネットワーク」がある。こうした武器を駆使した代表格がボトルウォーター(飲料水)などの宅配事業である。すでに、大きな成果をあげている企業も目立ち、ガス外収益の中心事業に位置付けているケースもある。ここではウォータービジネスを展開しているトップランナーに焦点を当てた。