ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/12/15プロパン・ブタンニュース)

昭石ガス社長
清水泰行
HSSEで昭石ガスの新たな挑戦

 昭石ガスの清水泰行社長は昨年一月に就任した。昭石ガスは、わが国のLPガスの元祖である。昭和二十七年、親会社の昭和石油川崎製油所の潤滑油精製溶剤として高純度のプロパンを旭加工油(昭石ガスの前身)が生産した。その余剰分を工業用LPGとして販路開拓に努めたが、さしたる成果はなかった。昭和二十七年末、炭労ストが起こり、その余波で都市ガスもとまった。プロパンは都市ガス代用として一般の認識を得た。これにより昭和二十八年の初めに家庭用燃料を中心に発展させる方針がとられた。ここから昭石プロパンのあゆみが始まった。
 二十八年には帝国石油が東北地方で自動車の代燃専門だったプロパンを京浜地区で家庭燃料として販売を開始した。また、関西では東亜燃料工業のプロパンを帝国酸素が一手に工業用に販売していたが、伸び悩んでいた。同じころ旭興社の遠藤潔社長が大阪で大日本プロパンを興して帝酸のガスで家庭用プロパンに拍車をかけた。この三つの流れが今日のプロパンの源流である。この辺の事情は、石油化学新聞社刊「LPガス業界十年史」上巻所載の西宮誠氏の「昭石プロパンのおいたち」に詳しい。
 そんなわけで昭石ガスは、LPガスの卸会社だったが、卸会社の役割を越えてLPガスの保安や技術、利用器具の開発などに力を尽くした。東京都や神奈川県の家庭用プロパンの「取り扱い基準要綱」の作成も販売主任者や作業主任者試験に備えてのテキストづくりや業界あげての講習会の講師にも昭石ガスは無くてはならぬ存在だった。また、調整器など供給機器の性能向上にも貢献した。この伝統は今日なお息づいている。
 清水社長は、これらをLPガスの卸業者として傘下販売店への支援業務だったと言う。最近は視点を変えて、例えばリフォーム事業で客の相談にのれるキッチン・スペシャリストやインテリア・コーディネーター等の有資格者を養成してお客さまの要望に応えられるようにしている。親会社のシェル・グループの石油スタンド経営がそうであるように地域での向こう三軒両隣から親しまれ愛されることが小売の原点である。LPガスも直売に徹しねばならないと言う。輸入LPガスは製品としていずれの輸入ルートも何ら差別がない。これを差別化するのはサービス力と技術力である。昭石ガスグループの小売部門を担う昭石ホームガス四社は、お客様の目線に視点を置いたビジネス展開を目指し、今まで培ってきた技術力をベースにサービス力を拡充しお客様の要望に応えていく。
昭石ホームガス
 昭石ホームガスは昭和三十八年に直売部門を担当するために一〇〇%子会社として創設された。その営業網は首都圏の十六号線に沿って神奈川支店(営業所=座間、藤沢、横浜、秦野)、西東京支店(同=府中、多摩、上尾)、千葉支店(同=千葉、野田、成田)、栃木支店(同=小山、鹿沼、宇都宮)、北関東支店(同=深谷、藪塚、高崎、前橋)の五支店十七営業所である。清水社長は、ホームガスを強化してリフォームのモデルショップを新たに開設するなどその強化を図っている。首都圏以外にも新潟県亀田町に「昭石ホームガス新潟」、高岡市に「昭石ホームガス富山」、稲沢市に「昭石ホームガス東海」等の一〇〇%子会社を持ち、いずれも系列の製油所や一次基地を擁して物流に強みを発揮できる直売会社である。
充填所網と物流のアライアンス
 「あんしんネット関東」は、関東エリアの充填、配送の物流を合理化するために本社を神奈川県座間に置き、昭和四十五年に発足した。多摩市の「多摩DS」は、物流合理化のために大同ほくさん(現エア・ウォーター)と昭石ガスのアライアンスで平成十一年に発足した。平成十一年には「SI東海」が昭石ガスと岩谷産業のアライアンスで物流合理化のために愛知県稲沢に発足した。平成十四年に川崎市にできた「フレンドリー・サービス・ネット」は、昭石ガス、冨士鉱油、三愛石油が同様の趣旨でアライアンスしたものである。
 これらを含めて昭石ガスの充填所網は、西東京の瑞穂町、神奈川県座間市、藤沢市、厚木市、千葉県野田市、栃木県小山市、埼玉県上尾市、深谷市、群馬県高崎市、新潟県亀田町、富山県高岡市、愛知県稲沢市の十二カ所におよぶ。
伝統ある老舗の挑戦
 認定販売業者である昭石ガスは、メーター、調整器、高圧ホース、ガス漏れ警報器の期限管理、供給設備、消費設備の点検調査をするほか神奈川県相模支店内に情報センターを置き、テレメーター・システムによる傘下販売店の消費者を含めて約十万件の二十四時間管理をして緊急出動体制を敷いている。業界活動ではKHK、卸協、都協会の法規・技術委員を務めて、技術に強い昭石ガスの伝統を堅持している。
 かくて前期(平成十四年一月〜十二月)は、LPガス販売量=二十三万六千d、売上高=百八十七億円(LPガス=百四十一億円、石油類、主として灯油=二十七億円、ガス器具=十三億円、工事=六億円)だった。
 LPガスの源流である老舗・昭石ガスの清水社長は、H(Health)、S(Safety)、S(Security)、E(Environment)の頭文字HSSEを掲げて新時代を切り開こうとしている。


 プロパン・ブタンニュース2003/12/15 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む