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(2003/5/26 プロパン・ブタンニュース)

カマタ社長
赤津一二氏
サービス業が土、日休みは論外

 「レモンガス」ブランドでユニークな経営をしている株式会社カマタの赤津一二社長にLPガス販売事業の近未来はどう変貌するか、その状況下でレモンガスが志向しているものは何かを問うた。赤津さんは論理が明快で普通の販売店の人々に分かりやすい言葉で話してくれた。
 元売は一次基地や配送の合理化を、卸は充填所の統廃合をして合理化に努めているが、これは末端価額を下げるためである。だが、小売段階は現状維持派が多く、元売、卸がいくら頑張っても末端に影響しない。これを分かり易く言い換えれば、元売=一〇%、卸=二〇%、小売=七〇%として今の合理化は三〇%の合理化でしかない。末端小売段階(七〇%)は仲良しクラブ的現状維持派で、これを打破して他のエネルギーと競争できるようにしなければ、LPガスはある日突然終わりになる。「ゆで蛙」の比喩はよく言われるが、ゆだんしているとその日が早いと言って「蓮の花理論」を説いた。蓮の花は今日二つ咲けば明日は四つ、その次の日は八つという具合に毎日倍々と咲いてたちまち池面を覆ってしまう。
 LPガス販売業はサービス業である。消費者が遊んでいるときがサービス産業の稼ぎ時である。普段の日にお客さんを訪問しても有効なのは精々三軒だが、土、日なら主人が在宅で十五軒は訪問できる。それでも土曜、日曜の営業はいやだという小売店主が多い。このようなサラリーマン感覚では自由化の波に洗われたらひとたまりもない。電気、ガス事業法が改正されて、大手ガス事業者ですら向こう五年間に電力料金の値下げに対抗してガス料金の値下げやシェア喪失を償うべく劇的とも言えるコスト削減策を実行している。
 このように規制緩和の状況下でのエネルギー政策の基本は競争優先になった。それなのにLPガス業界には競争を否定する傾向が根強い。LPガス業界の姿を分かりやすく表現すると、現状維持派が「良い人」、改革派が「変人」、安売/切り替え業者が「悪い人」の表現がいいだろう。「良い人」と言われて淘汰されるのを待つのはご免被りたい。
FC(フランチャイズ・チェーン)システム
 前述のように自由化が拡大され、電力と都市ガスの競争は激化し、その余波はLPガスにおよぶことは必至である。インターネットが普及して消費者は容易に他のエネルギーと料金比較をしてエネルギーの選択が自由になる。これに対してレモンガスグループはFC(フランチャイズチェーン)システムでのぞむとしてFCシステムのビジネスモデルを完成させた。
 赤津社長が構築したFCシステムは、カマタがフランチャイズチェーンの本部(フランチャイザー)となり、従来の直営小売店はエリアマネジャーとなって、その下に五百世帯を単位とする加盟店(フランチャイジー)をおく。フランチャイジーは店舗は不要で、「動くセブンイレブン」を目指す。LPガスの配送は本部が行う。カマタは既に全国四十五万世帯をカバーする独自のLPガス配送システムを構築ずみで、これが大きな武器になるという。
 三千軒の消費者を抱える既存販売店は、六つのフランチャイジーに分割して、販売店の社長はエリアマネジャーとなってフランチャイジーからロイヤリティー収入を得て経営指導をする。また工事のサポート部隊を抱えてフランチャイジーから工事も請け負う。そして本部は、経営のノウハウと商標、商号権の使用権などを提供するほか、財務管理、従業員教育、広告宣伝等を行う。この他に多様な新規事業があって、フランチャイジーのメリットは大きい。(この項『エネルギー』VOL35・NO12所載の「分散電源時代へFC販売革命―赤津一二・カマタ社長に聞く」による)。
 現在LPガス業界は元売二十社、卸売業者千四百社、小売業者二万七千社で全国二千六百万世帯の家庭に販売しているが、市場の将来性、あるいは市場の要求に応えるには一つのビジネスグループが抱える消費所帯数は百万世帯が最適である。消費世帯百万が理想的な単位であるならば全国にLPガスビジネスグループは二十六あればいいわけだ。それがためにはテリトリーの中で系列を超えてシステムを共有する販売店を増やすことが不可欠である。レモンガスグループは現在、直売十四万、卸売五十万だからわがグループは道半ばである。
もう一つのFC(燃料電池)
 カマタはもう一つのFCにも情熱を傾けている。そのFCとは固体高分子形燃料電池(PEFC)である。米国Hパワー社が開発したプロパン仕様の四・五`hの試作機を昨年三月、三井物産を通じて購入した。実証試験を続けていたが、このほど運転時間四千五百六十時間と発表した。そしてカマタは燃料電池を複数世帯を一括りにして数台のFCを設置するビジネスモデルの特許を出願した。
 電力会社の系統に頼らないスタンドアローン方式(単独運転)のLPガス燃料電池による完全分散型のコージェネレーションシステムである。かくて昨年批准した京都議定書にも貢献できる。二つのFCの道は「ローマに通じる」と赤津さんは胸を張った。
 
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