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(2003/4/28 プロパン・ブタンニュース)

広島ガスプロパン社長(広島県協会長・全スタ協会長・日連副会長・全卸協副会長・簡ガス副会長)
米田正幸氏
今こそ物流の共同化を

 広島ガスプロパンの米田正幸社長は強調する。
 平成16年度から電力も都市ガスも規制緩和されて垣根は次第に外され自由化される。これはLPガス業界にとって対岸の火ではない。垣根を越えた価格競争は必ず飛び火してくる。怖いのは電気である。これに対抗するには私が常々言っているようにLPガス事業のローコスト化しかない。LPガス業界は物流合理化をして一定の成果をえているが、一層の努力をしなければならない。
内外格差と内々格差の是正
 電気料金が現行から30%下がらないと日本の産業は海外に流出する。現行は韓国の2倍、欧米の3倍である。原因はガスの需要ピークが冬期で、電気のピークは夏期である。それぞれピークに合わせて設備をつくり、需要家全体にコスト配分していることが大きな要因になっているのではないか。経済が成長期なら多少エネルギー費が高くとも産業界はこれを吸収してきたが、経済が下降期になると変革が必要になる。今回の自由化も内外格差の是正を強調しているのはこのためである。また、改革では内外格差と並んで内々格差の是正も問題視している。
電力各社の天然ガスシフト
 原子力発電所の新設は計画通りには進まない。古い原発のリフレッシュも難しい。そこで電力会社は天然ガスの受け入れ基地を都市の近くにつくる計画がみられる。LNG輸入量の80万トンから100万トンの半分は天然ガス発電に、残りの半分は工場やマンション向けにパイプラインで供給する。たとえば水島(岡山県倉敷市)では新日石と中国電力が共同で天然ガス販売に乗り出すことになった。電力会社はこれによって送電ロスがなくなるメリットに加え、夏場にピークを迎える電気需要と冬場が最大になるガス需要の両方に対応できる。また、新日石水島のLNG基地では日本鋼管福山製鉄所に供給するとしている。このようにガスと電気が連携して大量のLNGを持ってくるようにすればコストを圧縮することができる。ガス事業法を見直すことによってこのような動きが活発化している。
天然ガス供給は9300キロカロリーでよい
 パイプラインで供給される天然ガスの熱量は地方都市ガスの場合は9300キロカロリーの天然ガスのストレート供給でよい。現在のLNG供給は1万1千キロカロリーであるが、これは大手都市ガス事業者がLNGの輸入ソースを複数持ち、それぞれの熱量が違うためブタンで増熱して1万1千キロカロリーに均一したものである。天然ガスパイプラインは熱量が違えば同一の道路に別にもう一本敷設しなければならない。電力は天然ガスストレートの9300キロカロリーでパイプラインを敷設している。地方都市ガス事業者が大手事業者と同じようにカロリーアップする必要はない。ブタンを混ぜて増熱すればコストも嵩む。また、地方のガス事業者はLNGをローリー輸送してサテライトシステムにすればコスト高になる。それよりもLPGのストレート供給の方が適している。エネルギーコストを下げるための制度改革だからコストアップ要因は排除すべきである。また、パイプラインの所管法令はガス事業法、電気事業法、鉱山保安法または高圧ガス保安法がある。いずれか有利な法令にのっとるべきである。
「天然ガスマル簡」
 今度の制度改革で簡易ガス団地に天然ガス供給が認められた。これは簡易ガスが点であったものが供給エリアの設定が認められたのである。誤解を恐れず「天然ガスマル簡」と言っておこう。供給区域の設定や料金の査定、保安等よいところは一般ガス、楽なところはマル簡ないしプロパン並みと評価できる。広島大学のキャンパスがある東広島にはマル簡団地も多い。ここに天然ガスパイプラインが通る。「天然ガスマル簡」の絶好のエリアである。
遠くを見、変化を起こすのが社長の仕事
 社長の仕事は自動車の運転と同じで、社長が目先を見てキョロキョロしていてはスピードがだせない。社長は遠くを見ることが絶対に必要だ。部長、課長それぞれの立場で魚をすくう網の目の大きさは違う。社長が小さな目の網で魚をすくっていては迷惑だろう。これは『広ガスプロパン30年史』所載の「米田社長に聞く」の冒頭にある言葉である。米田社長はこの言葉どおりに平成8年に広ガス海田工場内の三方が海に面する先端部に工費17億円を投じて「広島LPG物流センター」を造り、新日石ガス、岩谷産業、出光ガスアンドライフ等の共同利用を実現した。その後、全国各地に行われるようになった充填所の統廃合、系列を超えた物流の共同化の嚆矢をなすものである。米田社長はLPガスの料金を下げざるをえなくなってからでは遅い。今こそ物流を共同化してコスト削減をと結んだ。

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