ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/4/21 プロパン・ブタンニュース)

富士工器会長
前口元彦氏
バルク貯槽は大きめに

 前口元彦さん(富士工器代表取締役会長)にバルク貯槽の普及状況について聞いた。
 富士工器は平成10年に中国上海に日中合弁の上海富士工器有限公司を創業してバルク貯槽の海外生産をいち早く始めた。平成10年2月には上海生産のバルク貯槽105台を初輸入した。以来5年間、この3月末で上海産バルク貯槽累計3万6千台を輸入し、国内生産品の80キロ貯槽=2800台、985キロ貯槽=4500台と合わせて都合4万3千台のバルク貯槽を生産販売した。この期間のわが国全体のバルク貯槽普及台数は約7万8千台だったから富士工器はその50%強の占有率を持ったわけである。
 富士工器は今年3月1日から6月30日まで「上海富士工器創業五周年記念・ISO9001認証取得記念」と銘打って記念セールを実施している。
 富士工器はLPガスの溶接容器と調整器など供給機器のメーカーである。前口さんはこの二つの柱に三つ目の柱がほしいとかねがね考えていた。LPガス事業の流通改革を進めるには充填から配送に至る部分をいかに省力化するかにかかっている。それにはバルクシステムが最適と考え、上海での生産に踏み切ったのであった。そして左記のようにバルク貯槽生産販売で大きな部分を占めるに至った。
 資源エネルギー庁の委託調査で全国LPガス卸売協会が14年度のバルクシステムをまとめているが、長野県のサンリンは出荷量の過半がバルクシステムとなった。サイサンも宇都宮基地がバルク専用基地になるなど、バルクシステムは第二の発展段階に入ったとの印象を得たと担当者は言っていた。富士工器にとってバルク貯槽は溶接容器と供給機器に加えて、まさに第三の柱に育ったと言える。
都道府県別バルクローリー稼働状況
 バルクシステムでは貯槽と相まってバルクローリー(民生用)の稼働状況が普及の指標になる。平成15年1月末のバルクローリー(民生用)調査表=表参照=を示して、いま民生用バルクローリーは全国で829台が稼働している。それを都道府県別にランキングして、第1位静岡県51台稼働、2位長野県49台、3位神奈川県47台、4位福岡県42台、5位千葉県39台、6位愛知県38台、7位埼玉県37台、8位兵庫県28台、9位北海道26台、10位東京都25台と説明した。
 1位の静岡県では鈴与、サイサン、静岡ガスエネルギー等のバルクに熱心な会社が地域全体を引っ張る恰好になっている。長野県でのサンリンのバルク供給も長野地方に波及効果をもたらした。かくて民生用バルクローリーの配送量は1台で月間80トンが損益分岐点、100トン配送して何とか利益になる。そして配送コストはキロ当たり6円といったところと言う。
富士工器のバルク貯槽の容量別販売実績
 バルク供給への転換は流通コストの低減、業務の近代化に役立つが、大きな投資をともなう。そこで将来の単位消費量の増大を考えないで現状の消費量に甘んじてこれを基準に貯槽容量を決定すると先々に禍根を残すことになる。家庭用GHP等消費器具の開発が進み、年間消費量1トン時代に向かっている。その時には80キロ貯槽では年間最低13回、150キロ貯槽で7回、300キロ貯槽で3.5回の配送、充填が必要である。従って、バルク貯槽の理想的な設置計画は大型から500キロ、300キロ、150キロと進めた上で最終的に面で埋め尽くすために小容量貯槽とすべきである。だから将来の展望に立って二重投資にならないように貯槽容量を決定しなければならない。
 富士工器がこれまでに販売したバルク貯槽の容量別比率は、80キロ=7%、150キロ=10%、300キロ=48%、500キロ=24%、985キロ=11%であった。
昭和30年を想う
 富士工器の本社ビルは名古屋市新栄にある。ここは筆者が忘れえぬ思い出の地である。ここに富士工器本社ビルが建つ前に富士工器の創業者である前口庄衛さんが所有した家屋があった。これを借りてプロパン・ブタンニュースは名古屋支局としたことがあった。昭和30年代の初めである。その表通りは老松町で、後に富士工器と合併した調整器メーカーの富士産業があった。また、昭和30年2月の末だった。創刊間際のプロパン・ブタンニュースの東京本社に来訪された前口社長と跡田専務が日本石油ガスにプロパン容器を納めることになった。ついては新聞に1頁大の広告を掲載したいと申し込まれた。そして城北工器(富士工器の前身)の進撃が始まったのである。
 時移り今、バルク貯槽で気をはいている城北工器の様をこの新栄のビルで見聞して感慨にたえないものがあった。

 プロパン・ブタンニュース2003/4/21 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む