中期経営計画・水事業は第二の柱
トーエル社長
平間 茂氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <187>

 平間茂社長はこのところ連日、新聞が大見出しで報じているパロマ瞬間湯沸器のCO中毒事故にトーエルはどのように対処しているか、から話し始めた。
 わが社では問題になったパロマ製8号、12号タイプの湯沸器の全数交換を始めた。人の命はお金には換えられない。同タイプの在庫が無ければ、いつまでも待ってはいられない。お客の了解を得ながら大きなタイプのものとでも交換している。今はLPガスに対する信頼を優先して全数交換を進めている。8号、12号タイプだけではなくパロマ製全製品の点検も同時に行っている。これは当社の企業理念であり、当社代表の信念でもある「お客さま優先」の精神から発したものだと言う。
保安なくしてLPガス事業なし
 昨年は行政庁の立ち入り検査で法令違反のため営業停止処分となった事業者が相次いだ。当社ではこれより前、昨年10月からLPガス法14条の厳守、開栓時の調査・点検の徹底など順法体制の整備を進めた。横浜・保土ヶ谷・湘南・厚木・川越・埼玉・茨城・西東京の8つのタスクセンターに立ち入り検査の形で定期に内部監査を行っている。かくてコンプライアンスの励行で消費者の信頼をかち得ている。これがトーエルの営業基本政策である。
中期経営計画
 現在、トーエルのLPガス需要家件数は25万件、年間LPガス販売量15万トンである。今年を初年度とする中期経営計画「プラン20」では平成20年に売上高200億円、経常利益15億円を目指す。LPガス事業のほか水事業を積極展開する。
 LPガス事業は、CPの高騰で売上高は増大しても電気や都市ガスとの競争は避けられず、LPガス価格(末端の料金水準)は低下する。そうなると利益幅は大幅に圧縮される。そこで業務用需要を拡充している。ここ1年の間に約500件の業務用需要家を増やした。これはトーエルが長い間に培った物流の合理化・効率化が効を奏したのである。充填所スルーの配送システムが威力を発揮した。一般にLPガスの流通は製油所や輸入基地の一次基地からローリーで充填所へ搬入(ローリー運賃は1kg5円)、充填所で容器に充填し(充填料は1kg3円)、ここから配送車で消費者に届ける(配送費は1kg12円)、合計で1kg20円になる。
 トーエルの物流システムは、湾岸の一次基地から60kgアルミ製容器に充填して大型トレラーで大量にデポや収納庫(充填所)に搬入して配送車で消費者に届ける。一般に比べて半分以下、場合によっては4割程度に抑制できる。業務用は6トンバルクローリーで直接需要家に届ける。大型ローリー、6トン積バルクローリー、60kgアルミ容器という輸送手段に加えて朝3時には荷積みして遠くの方から順次荷卸しする。需要家密度の高さがさらにコスト抑制に貢献する。
5万軒超えた水事業
 ハワイウォーターの輸入・宅配事業を開始して約4年が経過した。現在、需要家は5万を超えた。需要期の現在は月間2,000軒ずつ増えている。年平均1万5,000軒は確実に増えている。ハワイというブランド・イメージが貢献した。しかし、為替の変動、港湾ストなどのリスクを回避するため、また、お年寄りや女性でも持ちやすいボトルにするために北アルプスを水源とする国内産の水の販売を8月から開始する。「アルピナ」という商品名である。直売や卸売のほかにOEMの生産にも応じる。ハワイウォーターと同じように逆浸透膜によって不純物を除去したピュアーウォーターである。
 価額は3ガロン強(12L)ボトル995円、サーバーは月600円の使用料である。水事業もこれからは価額競争の時代に突入する。おそらく3ガロン1,000円が攻防ラインだろう。その予測のもとに1,000円を切る値段の設定となった。
 中期経営計画の最終年の平成20年に売上高200億円、経常利益15億円を目論んでいるが、売り上げの20%、経常利益の40%は水事業によるとしている。正に水事業は第二の柱である。
トーエルの企業理念
 Sincerity(誠実)が企業理念である。愚直なまでにお客さまの利益を優先して日常の営業活動を行う。誠実を価格の面で具体的に紹介しよう。都市ガス・電気の攻勢が激しいが、近い将来のLPガス価格を10立方m4,000円と想定している。トーエルは地域ごとにシミュレーションして合理的な料金設定に努めている。
 平間茂社長は東京都出身、昭和18年生れ64歳の働き盛りである。昭和40年3月、明治大学卒業と同時に岩谷産業入社、横浜、仙台、静岡、茨城でLPガスの営業第一線で活躍した。平成16年、同社常務を最後に退任してトーエルに入社、今年5月に社長に就任した。温厚実直な人柄は周りの信頼が厚い。

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