専務理事兼事務局長の名伯楽ぶり
日本ガス機器検査協会専務理事
膳場 忠氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <184>

 日本ガス機器検査協会(JIA)の専務理事・膳場忠さんは、今から9年前までの3年間、日本ガス協会の業務部長だった。規制緩和の波がどっと押し寄せた時である。規制には料金や事業参入などガス事業の独占に対する経済規制とガスの安全、保安を担保する社会規制があって、この両者を一緒くたにして規制緩和を論じるべきではない。社会規制は必要があればむしろ強化してよいという理念をその当時から持っていた。この主義・主張を今なお堅持して現在のJIAの仕事を推進している。
 JIAは昭和42年に設立された。主な事業を列挙すると、43年LPガス法に基づき湯沸かし、風呂、ストーブ等ガス器具の検定機関となった。46年にはガス事業法に基づき同様ガス器具の検定機関になった。後にこんろ、GHPなど法律に定めがないガス器具の検定も行っている。54年に特定ガス工事監督法に基づく講習機関、56年には工業標準化法による認定検査機関になった。このころいわゆる「黒本」を発行してガス機器設置工事のバイブルと尊重され、広く普及を見た。平成6年JIA―QAセンターはISOの認定を取得、七年ガス事業法の主任技術者試験機関となる、12年にガス事業法の登録ガス工作物の使用前検査機関に認定された、18年に工業標準化法の認証機関に登録された。このように国の指定を受けた第三者機関としてガス器具そのものの安全、設置工事する人の教育、資格の認定、ガス工作物の使用前認定など多岐にわたる事業を行っている。専務理事・膳場さんは、JIAは今後、検査のグレードを上げ、基本的には安全性、そして環境性を含めたガス機器の機能向上に貢献したいと強調した。
名古屋検査所に電波暗室
 最近のガス機器は電子制御なしには考えられない。最近報道されているエレベーター事故もこの部分の欠陥が指摘されている。これまでのガス機器の検査は燃焼中心だったが、今や電子制御を強化しなければガス器具の安全を確保できない。JIAは人材、設備とも電子制御に力を入れ、名古屋検査所に電波暗室を設けて電波による誤作動の確認試験をしている。現在これに関する基準で、正式なものはヨーロッパ基準「EN298」(ガス燃焼装置用の自動ガスバーナー制御システム)だけである。JIAはこれをお手本に基準策定を検討している。
FCもワン・ストップの認証機関
 FC(燃料電池)は、いまだコストも高く、本格的実用には至っていないが、環境、省エネ性から戦略商品として注目されている。FCにはPEFC(固体高分子型)とSOFC(固体酸化物型)があって現在行われているのは前者PEFCである。これは発電効率は低いが、発熱レベルは80度C~90度Cと低く家庭用コージェネ機器に適している。SOFCは発熱レベルが千度C弱と高いが、発電効率は電力会社の大型発電機なみが期待されている。FCの燃焼、改質、発電を本格的にワン・ストップで認証できる機関はJIAだけである。首相公邸のPEFCの第1号機はJIAの認証実績である。
逃げない、隠さない、嘘をつかない
 昭和42年、東京大学経済学部を卒業、東京ガスに入社した。大学ではボート部に属し、年間300日、戸田の合宿住まいだった。東ガス入社時の面接で某国立大学出の役員さんが自分の出身大学のボート部員は、ちゃんと教室に行っている。君は学校に行ったのかねと言われて膳場さんは、だからその大学は弱いんです、と応えた剛のもの。確かに当時の東大のボート部の優勝回数は多い。東ガスでは人事、労務畑だった。労働組合の専従も2年ほどした。ガス会社の工場跡地の土壌汚染対策にも当った。社内会議で当事者たちは法律もない時代のものである。損害賠償を請求される恐れもあるから塀の外への汚染の影響をわざわざ公表すべきではないと主張した。夜中まで徹底的に議論した。千住や豊洲など住民やマスコミと二十数カ所を回り語り合った。「逃げない、隠さない、嘘をつかない」という信条を貫いた。そして謝った。こちらの正直が分かってもらえ、よい方向に回り出したのである。正直に話せば理解される。この経験は強烈な印象として忘れることができない。
専務理事兼事務局長
 JIAは検査、検定、認証、主任技術者試験機関、QAセンター業務など技術系職員が圧倒的に多い。そのような中で膳場専務理事は事務系のベテランである。膳場さんの肩書は、専務理事だけではなく事務局長兼務である。その意味がよく分かる。JIAのスムーズな運営、新たなる時代の要請に所を得たる専務理事兼事務局長と言うべきである。


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