LPガスの「つながり感通信」
NTTテレコン社長
米重太平氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <176 >

 NTTテレコンの米重太平社長は、昨年12月に同社が発表した新商品「あんしんテレちゃん」について噛んで含めるように丁寧に話してくれた。故郷を離れて暮らしていると親の安否が気がかりである。毎日、電話をするのは大変、親の方も毎日、電話で確認されるのは煩わしい。それを解決してくれるのが「遠隔介護見守りサービス」である。炊事や風呂などガスを使った時間と使用量を遠隔地に住む子供の携帯電話等にメールで知らせる。ガスは生活と密着しているから無事に生活しているなと息子は以心伝心で分る。逆にガスの不使用が長時間続けばガス不使用メールが届く。寝込んでいるのではないかと電話をかけてみる。
 これら遠隔介護用「見守りサービス」の分野では、電気ポットの利用状況を通知する「電気ポット型」、住居の要所に人を感知する赤外線センサーを配置し住居内の移動状況を通知する「人感センサー型」が先行している。これらのサービスを受けるにはお年寄りのお宅に専用機器を新たに設置する必要がある。しかし、LPガスの場合は既存のメーターにNCUと電話線をつなげるだけで、簡単かつ低料金でサービスを受けることができる。お年寄りが抵抗感を持つ特別な機器の取り付けがなく、まさに、生活に密着したLPガスを使った温かみがある「つながり感通信」と言うべきか。
「見守りサービス」の市場性
 わが国の70歳以上の単独世帯は、775万7,000世帯。うち1人暮らしは、257万7,000世帯、夫婦のみの世帯は518万世帯である。その半数以上の397万3,000世帯が人口15万未満の市部及び郡部で生活している(厚生労働省・平成15年国民生活基礎調査)。
 青森県八戸市の高齢者人口の状況を見ると、平成15年の高齢者人口=4万6,500人、10年後の平成27年=6万3,600人(高齢化率26%)。高齢者のいる世帯数は3万5,000世帯と推計している。うち単独世帯=7,100世帯(20%)、夫婦のみの世帯=約1万200世帯(29%)と推計。平成37年頃の高齢者世帯数は約1・7倍に増加すると見込まれている。そして単独世帯の割合が上昇し、1人暮らしの高齢者の割合が増えると予想している。よってLPガス業界は、2050年ぐらいまでは「見守りサービス」により、新たな付加価値収入を確保することができると言う。(平成16年度石油ガス販売事業者構造改善支援事業で八戸液化ガスが行った「高齢者安否見守りサービス」の事業化に向けた調査による)。
盆と正月が販売のシーズン
 LPガス業界で「見守りサービス」を最初に始めたのは大分市のダイプロである。平成16年9月に愛称「みまもりダイちゃん」で始めた。見守る側は、全国どこからでも申し込み可能、Eメールを受信できる携帯電話かパソコンが必要、メール受信費用は見守る側の負担である。見守られる側は、ダイプロガス利用の客に限る。何事も初めて道を拓く者は銀座通りを行くようにはいかないようで、普及のテンポが鈍いとダイプロの山田實会長はもどかし気だったが、思い直してか息子さんや娘さんが帰省する盆と正月が販売のシーズンだと意欲を示した。
八戸液化ガスは協会支部で取り組みを提唱
 「見守りサービス」の市場性の項で八戸液化ガスの調査を引用したが、同調査は次のようにも述べている。エネルギー間の競争において電気業界は面での営業展開を前面に出している。一方、われわれLPガス業界は事業者単位の点の営業である。電気業界の面の営業に対抗する策を見つけ出し推進することが急務である。その策の1つとしてLPガス業界固有ともいえる集中監視システムを活用した「見守りサービス」を1事業者のサービスでなく、八戸圏域のLPガス業界全体で推進できれば電気業界に対抗できるのではないか、と述べて県協会八戸支部で検討委員会を発足させた。
 八戸液化ガスの「見守りサービス」は、愛称「はちえき見守りサービス」で、今年1月にスタートした。年内に200軒にすると担当部長の馬場英二さんは言っている。
NTTテレコンの「あんしんテレちゃん」
 米重社長は次のように言っている。当初は、当社の役目をダイプロ様のソフトの全国のLPガス販社への提供のみに限定していた。しかし、このサービスを必要としているのは都会に住む息子さん娘さんであり、都会でサービスを申し込もうとしても受け付けてくれるLPガス販社名が分からない。そこで、NTTテレコンが間に入ってLPガス販社に取り次ぐサービスを付加した。これが昨年12月にスタートした「あんしんテレちゃん」です。取り次ぎによりダイプロのお客さまを増やすことにもなる。
 さらに、両親のもとに通う費用を考えれば、数万円のNCU設置代の負担は問題ないというお客さまが多くおられることが分かった。現状のNCU設置率は2割程度ですが、残りの8割のお客さまにはNCUのお買い上げを勧めれば良い。これでNCU未設置の壁を乗り越えられる。LPガス販社との連携が得られれば、お客さまがLPガスを利用してさえいれば概ね全国でこのサービスが受けられる。
エリアフリー化
 都会に住む息子さん娘さんは、ご両親がLPガスか、都市ガスか、まして販売店名までは意識していない。お客さまから申し込まれれば、相互に情報交換して、「ガスをお使いならすべてのお客さまがこのサービスを利用できる」というコンセプトが重要だ。「LPガスIT推進協議会」でも本年度のテーマとする予定である。八戸液化ガスも言われているように、オール電化対策として、業界全体としての取り組みができるよう、そして、より便利で低価格の遠隔介護ツールの提供を通して社会貢献が図られるよう、努力していきたい。

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