FASTシステム LPG車改造に威力
LPG内燃機関工業会会長
長屋静夫氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <174 >

 LPG内燃機関工業会は3月17日、東京・新宿のワシントンホテルで第43回定時総会(平成18年度)と併せて定時研修会を行った。同工業会の長屋静夫会長は、この研修会でイタリア・ロバト社が開発した燃料噴射(気噴)方式のシステムを発表した。これは総会の数日前の14日に国土交通省から日産ティアナをLPGに改造する許可を得た新方式「FASTシステム」である。これによってLPG車に改造する「内工会方式」は一段と強化された。今年度内燃機関工業会総会の最大の引き物と言えよう。
長屋静夫さんは日個連の指定工場会長
 長屋会長は内工会の9代目の会長であるが、昭和60~62年に6代目会長も務めた。内工会会長として再度の登板である。いい時ばかりではない。内工会々員による改造の推移を見ると昭和43年の4,600台がピークで、昭和59年から最近に至るまで年間500台規模で推移している(図1)。長屋さんはLPG車が始まったばかりの昭和38年にはタクシーの整備工場でLPG車への改造を手がけた。ホースは手締めだった。日本LPガス自動車研究会の海田健次さんが固定式にせよと強調していたときである。
 同じころイサミ交通の弓納持(ゆみのもち)久社長は積極的な方で都立大に10㌧タンクを2基あげ、ディスペンザーでタクシー用スタンドを始めた。都内で初のLPGスタンドだったのではなかろうか。48年のオイルショックのときには片道10時間をかけてタンクローリーで四日市を往復してLPGを運んだ。長屋会長のもう1つの顔は、北栄自動車工業所社長である。
 東京の個人タクシーに蝸牛と提灯があるが、前者は東個協、後者は日個連である。長屋さんは日個連の指定工場会の会長である。個人タクシーは、概算であるが、東京に2万台、全国で4万台、その73%がガソリン車、残りがLPG車である。個人タクシーのオーナーは排気量2500ccのトヨタのゼロクラウンや日産のフーガ、同じく日産の2300ccのティアナなど高級車を求める傾向が強い。だが、カー・メーカーは法人タクシー向けの標準車しか設定していない。バルブ、ヘッダーなどの機器部品メーカーも個人タクシーやハイヤー向けの機器を販売しようとしない。個人タクシーの需要には、改造車が主となっている。このような状況の下で2010年までにLPG車をさらに26万台普及させる計画がまことしやかに言われているが、筆者などは理解に苦しむところである。全国LPG自動車登録台数推移(図2)を示す。
FASTシステム
 イタリアのロバト社が開発した燃料噴射方式(気噴方式)で、コモンレールを通じて各シリンダーに効率よく燃料を噴射する。オリジナルのガソリンエンジンのECUの指令信号をそのままLPGモードに変換する。ガソリンエンジンECUの性能/機能を阻害することなく最適の噴射量と時間を拾い、LPガス燃料に変換して噴射する。ガソリンとLPGが両立しているので、OBDには影響を与えない。ガソリン車の性能特性を生かしているからガソリン車同等もしくはより低い排ガス性能を達成できる。エコロジーではEURO4をクリア。長期の耐久性が保証され、特殊車両にも合わせたシステムの製作も可能である。
 長屋会長はこのシステムで日産の「ティアナ」をLPG車に改造する国土交通省の許可を3月14日に取得した。内燃工が前年度に自動車教習所の教習用LPG車改造200台の実績に続いてLPG車改造の「内工会方式」の大きな前進である。
技術ノウハウ、資材購入、書類窓口に対する速やかな対応の3本柱
 門倉商店自動車部の技術ノウハウの提供、北栄自動車工業所による資材の購入、日産のティアナ2300cc=227万円、トヨタのゼロクラウン2500cc=470万円等を北栄自動車が購入。そして内工会事務局の役所窓口に対する速やかな書類の提出。この3本柱がかみ合って 内燃機関工業会のLPG改造車の「内燃工方式」は着実に進捗している。

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)