東大和市のLPガス条例に続け
東京都LPガス協会副会長
尾崎商店代表取締役社長 
尾崎義美氏
ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <157>

 東京都東大和市の尾崎商店社長・尾崎義美氏を同本社に訪ねた。尾崎さんは東京都LPガス協会の副会長で北多摩西部支部長である。同支部には立川部会、武蔵村山部会、東大和部会、国立・国分寺部会、昭島部会の5部会があり、68事業者が組織されている。そして尾崎さんは東大和部会長でもある。
 東京都LPガス協会は昭和30年9月に設立されて今年は創立50周年である。協会は「50周年記念誌」を刊行することになり、記念誌に載せる協会長、副会長、支部長等による座談会がこのほど行われた。テーマは、50年を振り返って、次代に語り継ぐべきことであった。筆者は都協50年記念誌の編集の手伝いをしているのでこの座談会に出席して尾崎さんのお話にいたく感銘を受けた。
 そこで東大和市が市の公共施設にLPガスを使う条例にまで漕ぎつけたかを聞きに尾崎義美社長を訪ねたのである。
東大和市の小・中15校全部がLPガスを採用
 東大和市は現在人口8万だが、昭和50年代の初めは小学校1校と中学校1校だけだった。今は小学10校、中学は5中まである。このすべての学校にプロパンを採用してもらったのである。都市ガス切り替え阻止の活動が稔ったのだ。新潟中越地震の状況を見た市長さんたちが改めて地震に強いLPガスを再認識した。やはり尾崎さんたちが言っていたことは本当だねということになり、今では給食センターも第1給食センターはプロパン、第2給食センターは東京ガスである。
 どこでもそうだろうが、学校は避難場所に指定されているが、ここにプロパンが設置されていることは、災害が起きて道路が寸断されても、暫くは燃料の確保ができる。公共施設が建て替えられるときも東京ガスに替わるのではなく、LPガスを使っているところはそのまま残しておくということが市議会で採択されたのである。
 これは大きな意味がある。東京都の中でも市長や市議会に陳情してLPガスがこういう形で採択されたのは東大和市が最初である。今後、昭島とか八王子でもそういう運動が展開されるだろう。
 尾崎さんはさらに語をついで間違ってもらっては困るがと前置きして、LPガスは災害に強いからと言って災害用のガスではない。日常に使ってもらって災害時にも役立つと強調した。
尾崎家の事業
 尾崎商店の現会長である社長の父上・尾崎美代次氏は、昭和30年代に八王子の東京肥料会社から肥料や飼料を仕入れて販売していた。当時この辺りは豚や鶏を飼うものが多かった。そんな土地が宅地化され、それらの売り上げが減少した。そんな時に東京肥料に勧められてプロパンを始めた。
 LPガスと同時に親父はお米や酒類の販売にも進出した。今は時代を反映してコンビニやお酒のディスカウントなど時代の流れに沿った商売をしている。義美社長は昭和50年に明治大学を卒業して2代目となったのであるが、親父譲りで時代と共に商売の矛先を変えながら今に至っている。
 かくて現在の尾崎商店の事業規模は、年商10億円、LPガス20%、住設機器20%、灯油販売10%、灯油は本社のバックヤードに100㌔㍑タンクがしつらえられている。そして酒類およびお米の販売が50%である。お酒のディスカウントショップは、市内に3店舗あって人気を呼んでいる。LPガスのお客さんがお酒を買いに来てくれるのはあり難いと言う。
 美代次会長は81歳の高齢だが、お元気で今なおゴルフのプレーをされる。ゴルフといえば今は取りこわして灯油タンクなどになっているが、ご自分の裏庭にバンカーが4つもあるゴルフの2ホールがあった。美代次会長は東大和に三町歩を所有したが、これを不動産投資にではなく、実業にのみ活用した。堅実にして時代の流れを的確に見極めた経営者である。
尾崎家の人びと
 尾崎義美社長は明大出であることは述べたが、明治大学体育会スキー部一般部らいちょうスキークラブ監督という肩書がある名刺を見て、「明大飛行隊」の愛称があるジャンプで鳴らした明大スキー部監督と知って眩しい存在に見えた。
 自分は競技部門ではなく一般部門だと謙遜されるが、同好会のそれではなく体育会系の監督である。子供のころ西武の狭山スキー場がオープンしてスキーに親しんだ。スキーのシーズンは家業のLPガス事業が猫の手も借りたい繁忙期だが、親父は黙ってスキーに没頭させてくれた。
 尾崎商店の専務である次弟の尚史さんも早稲田大学のスキー部だった。そしてお酒販売会社である尾崎の社長の次々弟・武志さんは明大ゴルフ部のキャプテンだった。
 それだけではない。社長の長男・聡義(あきよし)さんは、尾崎商店に入社3年目だが、日体大出のバスケットボールの選手である。今は出身高校のコーチもしている。社長の次男・将義(まさよし)さんは、今年の選抜高校野球の西東京大会で惜しくも準優勝となった明大中野八王子高校のピッチャーである。美代次会長もお若いころに青年団で長距離の選手として活躍した。
 東大和市の公共施設にLPガスを常時使う条例をかちとった尾崎義美東大和部会長のたゆまぬ努力は、尾崎家のスポーツマンスピリットと無縁ではないと思った。

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)