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(2005/2/14プロパン・ブタンニュース)

日本瓦斯社長
後藤正雄氏
これが日本瓦斯の真骨頂

 日本瓦斯は今年7月に創立50周年を迎える。昭和30年7月にLPガスの需要増大と公益的将来に着目して家庭用LPガス普及のために資本金250万円で設立された。それが現在、資本金は創業時の2,000倍の50億円の会社に成長した。前期、平成16年3月期の売上高519億4,800万円、経常利益24億9,600万円、税引き後利益11億5,500万円だったが、今期は売上高600億円、経常利益36億円、税引き後利益15億円と予想される。東彩ガス、新日本瓦斯、東日本ガス、北日本ガス等グループ各社との連結決算では売上高800億円、経常利益54億円、税引き後利益18億円と見込まれている。
 このような成長を遂げた経営の要諦、会社経営の肝心かなめのところを教えてほしいと後藤正雄社長に申し入れた。それも理論、理屈ではなく、社長が昭和33年に日本瓦斯に入社この方、これぞ日本瓦斯の真骨頂だというところをお話し下さいと注文した。
直売の1dは卸の20トンに匹敵
 後藤社長は昭和33年、ニチガスに入社した。社員章がナンバー22だったので、22人の会社であった。
 入社当初は先輩の車に同乗し、卸売の巡回の毎日だった。その当時のニチガスは卸売が中心で、約120社の得意先で運営されていた「ともしび会」の下に結集し、直売はまだわずかな実績であった。しかしこの時すでに、東海村に集団供給の拠点ができ、今の簡易ガス団地のはしりだった。また、米軍立川基地に販売所ができ、米軍駐留兵に対しガスを個別供給していた。34年に入り、現会長の石橋の号令で直売指向に大きく走り出した。当時卸を担当していて、お客さまから苦言をもらいながらも「卸20dは直売の1dだ!直売で日本一にならなければ、ニチガスの将来はないぞ!」の号令で、大きく方向転換を決めて進んだ。その時の苦労があって今のニチガスが存在する。本当に勇気ある決断であった。また、新商品開発も昭和35年〜36年にかけて、現会長の石橋がアメリカから持ち帰ったプロパンキャブを、ニチガス社員全員で小型トラックに取り付け、苦労しながら改良に改良を重ね、初めてタクシーに採用された。瞬く間に全国に広がり、プロパンタクシーの普及に大きな貢献をした。
飛車・角抜きの歩だけの勝負
 小売は一人ひとりの消費者とFACE TO FACEの商売である。これを営業マンにやらせるために、配送業務を分離して配送業者に委託した。これによって営業マンは、新規の消費者の獲得・ガス器具の拡販・単位あたりの消費量の引き上げに集中できるようになった。最初は大口団地から始めたが、東京オリンピックの頃には小口の消費者にも実施し、成果を積み重ねた。それは正に飛車・角抜きの歩だけの勝負である。配送業務を分離したことで、新たに採用した営業マンの定着率が格段に良くなった。
「早わかし3号」から「GHP3兄弟」まで
 昭和40年頃、LPガス消費拡大にはお湯の需要増に乗らない手は無いと、家庭用の瞬間湯沸器「早わかし3号」と言うのを半年に3,000台販売するから出荷してくれと、名古屋のリンナイに頼みに行ったが間に合わなかった。その頃ガス器具の仕入れも担当していたので、切歯扼腕したものだと当時を述懐する。ガス消費量の拡大には、ガス利用器具を売りこまねばならないことを痛感した。これに次いでニチガスは家庭風呂に着目し、給湯器売り込みに徹してガス消費量の増大を図った。また、昭和60年、GHPが登場するやガス空調の重要性に着目し、夏季冷房需要により年間ガス消費性向をV字型からW型に変化させるなど、顕著な実績を示した。さらに、最近ではGHPをベースとしたガスコージェネレーションでも、GHPコンソーシアムが毎年行っている販売事例論文コンテストで、各分野の賞を総なめする成果を示している。団地供給に始まり、LPG車、簡易こんろ、ボンベやGHPをベースとしたマイクロコージェネまで、ニチガスの歴史はLPガスの用途開発の歴史でもある。
オール電化攻勢とどう戦うか
 新築の入居者がガスを引くに当って、ガス屋は申込書を受け取って開栓に行く。ガス管が敷設してあるから、客は当然ガスを使うものと思い込んでいる。申込書ではなく契約書を求むべきである。電化攻勢は、住宅が建つ情報に基づいて行動している。それは初期のLPガス業者がやったことである。公社・公団の住宅が建てば入居日の情報を得て現地に向かい、引越しの手伝いをしたものだ。今電気屋がそれをやっている。黙っていてもガスの申し込みが来ると言った甘い営業では、オール電化攻勢に勝てる訳は無い。ニチガスは最近、ミネラルウォーターの販売を始めたが、これがお客とのFACE TO FACEの商売の原点に立ち戻るよすがになれば良いと思う。

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