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(2004/5/17プロパン・ブタンニュース)

清水燃料社長
清水保男氏
説得力がある静かな口吻

 清水燃料の清水保男社長は、平成七年から東京都LPガス協会の西多摩支部長である。昨年までは三多摩支部連合会長でもあった。三多摩支部連合会は、北多摩南部支部(四十六社)、同西部支部(六十九社)、同北部支部(五十八社)、この三支部を一括り、八王子支部(六十二社)、と南多摩支部(四十四社)を一括、そして西多摩支部(百二社)、都合三百八十一社である。カッコ内の数字は、東京都LPガス協会の販売部会の支部会員数(今年三月末現在)である。同時期の都協会全支部の販売部会・会員数八百六十二社だから東京都のLPガス販売業者の半数近くが三多摩地域にある。
 清水さんは都協会の副会長でもある。若くして父上の事業・清水燃料を引継ぎ、青梅市今井に充填所を置き、旧ブリジストン液化ガス(現三井石油)のLPガスで卸・小売りを営み、家庭用消費者七千軒、直売・年間二千d、業務用は病院や給食センター等がある。GHPの設置も熱心である。卸は年間七千dである。業界活動では同じ西多摩の福生市の田村祐一氏を補佐した。田村氏亡き後はその跡を継ぎ業界内外の人望が厚い。そんなことを余り書いてくれるなと言われたが、青梅商工会議所会頭をはじめ四十余の公職を持つ紳士である。
多摩にもオール電化マンション
 多摩は東京に近いので中央の情報に直接接する機会が多い。その点で遠く離れた地方と違う。都市ガスや電力の攻勢も現れ始めた。オール電化マンションも建ち始めた。自ずと価格競争になる。いつまでも従来価格に居座ってはいられない。人情がらみの昔ながらの絆(きずな)も保ちにくくなったと言われるが、町内会、消防団、PTA、神社の氏子の集まり等々地域の持つよさ、絆が新しく育ち始めている。お客さまにそういう新しい気持ちが芽生えているのも事実である。人情豊かな風土をなくしてしまっては国がすたれる。販売体制を整えて、知恵をしぼり、他燃料との競争に打ち勝たねばならないと言う。
 清水さんの話を聞きながら筆者はこのシリーズの第一回「都市ガスエリアでプロパン畑を耕し続けて」という都協会長・河原勇社長との対談を思い出した。河原さんはその本社がある足立区青井一丁目の町会長を多年続け、青井一丁目にある愛宕神社の氏子総代でもある。青井一丁目から六丁目にかけて三千世帯ほどあるが、その五〇%は河原実業の客である。「これは東京二十三区内だ。そこで小規模導管供給を数カ所やっている。その配管設備費は一戸当たり三十万円だからLPガスは十立方b当り四千五百円前後で東京ガスより安い」と述べた。
三多摩の風土
 昭和三十年九月に東京都プロパンガス協会が設立された。その手足となる七支部が翌三十一年に生まれた。西多摩支部の前身の三多摩支部はその時に設立された。その初代支部長は東京安全瓦斯の田村祐一さん、副支部長は清水さんのお父さんが務めた。その後、三十六年までに都協の支部は十二に増えた。四十二年に三多摩支部は西多摩、南多摩、北多摩北部、南部、西部の五支部に分かれた。かくて今日に至っているのである。田村祐一氏はスタート時の会員数は百五十一人だったと述べている。
 青梅は機業地として南の八王子、北の川越、所沢とともに著名で、青梅縞(おうめしま)、青梅綿は全国に知られたが、現在は生産されていない。今はICなど東芝の下請け工業が盛んである。
 往時茫々と言うが、先祖の切り開いた道はその子たちによって受け継がれ新たな発展を遂げようとしている。歴史小説の世界では幕末の新選組の近藤勇も土方歳三も沖田総司も三多摩郷氏である。田村祐一氏も福生の豪農の出自である。昭和三十年にできた全国プロパン協会の初代専務理事・井上雅義氏も三多摩郷氏の出だった。清水保男さんの静かな話ぶりは妙に説得力がある。明日の業界を築く力が潜んでいるように思えた。これも三多摩の風土が生んだ頼もしい人柄である。

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