(2004/5/10プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)

人気ドラマ「冬のソナタ」

 最近、日本のテレビ番組の中に韓国ドラマが登場し、周りの日本人達が好奇心に満ちたまなざしで質問してくることが多くなった。
 「冬のソナタ」で知られている韓国ドラマの主人公であるペ・ヨンジュンのソフトなイメージがどうも日本の女性の心を掴んだようである。韓国でも二〇〇二年に放映され、平均視聴率二五%に近い記録を残した大人気のドラマだった。私はドラマを見ていなかったが、周りから聞こえてくる話だけで内容は十分知っていた。ぺ・ヨンジュンのヘアースタイルとマフラーファッションそして、特に相手役の女優、チェ・ジウの舌っ足らずがかなり話題になっていた(主人公の名前ジュンサンを、舌が短いためにドゥンサンと呼んでいた。日本人にはこのささやかな面白みを感じることができないのが非常に残念である)。とにかく、「冬のソナタ」の成功に後押しされ、多くの韓国ドラマが放映され、また企画されているという。
 なぜ韓国のドラマがこれほど人気を得ているのだろう。多様なドラマの中で韓国ドラマを好む理由は、レトロ、復古ではないかと思う。新しい素材と独特の構成で華やかになった日本ドラマの中では昔の純粋な感性の思い出に浸ることが出来なくなり、日本のおばさま達は寂しかったに違いない。忘れられていた物語が韓国ドラマを通じて展開されるや、彼女達の失われていた純愛という感情が息を吹き返したのではないだろうか。
 韓国ドラマが日本のそれとは異なる大きな特徴は、視聴者の意見によって内容が変わったりもすること。例えば、交通事故で死亡した人が突然、生き返ったり、悪役を急に死なせたり。もうひとつ、いつも決まって典型的なキャラクター(善良な女・悪女・渾身的な求愛をする男・物質的な富を提供するなど別の渾身的な男など)が登場し、善悪の明瞭な二分法を中心とした展開が多い。そして、善良な女は黒いストレートのロングヘア、悪女はおしゃれなショートカットかパーマといった具合。
 結局、韓国ドラマの内容は、日本ではとっくの昔に流行し、今はないものなのに、かえってその見飽きたものが今視聴者達の心を捉えた、というのだ。しかし、偏った韓国ドラマの素材や内容が、他国で、噛んで捨てられるガムにならないことを祈るばかりである。