ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/2/3 プロパン・ブタンニュース)

東京都LPガス協会 専務理事
豊島三一氏
点検の合間に家畜に餌やり

 

 東京都LPガス協会の専務理事・豊島三一さんは、伊豆諸島の三宅島噴火・地震災害で全島避難から3度目の正月を避難先で迎えた罹災者、また島内のLPガス設備の保守・点検活動等に示された全国からの救援に対し、深い感謝を表明した。
LPG供給設備はライフライン
 三宅島の火山災害との都LPガス協会の闘いは、平成12年6月末の群発地震の発生から始まった。都協は「伊豆諸島噴火地震対策本部」を設置して、新島の被害住宅に簡易こんろ貸与、三宅島でも防災担当の残留者のためにLPガスによる炊き出しをした。当初は1〜3カ月程の避難と考えられたが、同年8月29日の火砕流によって9月1日に全島避難勧告が出された。それが今なお続いて避難先で3度目の正月を迎えることになった。
 この間、都協会、都環境局スタッフ、現地に供給している卸業者の保安担当者による数度にわたる調査・点検チームを派遣し、メーターをはじめ供給機器を調査サンプルとして回収するなど、いつ帰島の許可が出てもよいように、LPガス設備の状況を把握した。三宅島にはJA三宅島(消費者数=約904戸)、三宅島産興商会(同850戸)、宮正商店(同約220戸)の3軒の販売事業者が約2千戸に供給している。
 島民にとってLPガスはライフライン。都協はこの確保に最大の努力を傾注した。また、島民にとってLPガスが水道、電気、電話と共にライフラインとして欠くことができないことを都や国にアピールして都や国にある程度認めてもらえた。
伊豆大島三原山の噴火(61年)では
 昭和61年11月21日に起こった伊豆大島三原山の噴火災害では都協会は二次にわたって点検調査隊を送り込み、二次災害皆無、LPガス設備の保全に実績をあげた。豊島さんは、都協が発行した「昭和61年伊豆大島三原山噴火災害― 大島町プロパンガス安全点検調査報告―」という冊子を示して、この経験がたいへん役立ったと言う。報告書は次のように述べている。
 大島町のすべてのLPガス使用設備4069件を屋内、屋外2回に分けて安全点検調査を実施した。一次、二次合わせて調査人員は200人を投入した。この結果、1件の事故もなくプロパンに寄せる信頼を高めた。
 冊子の巻末にボランティアで点検調査に当たった人々の文集がある。その一、二を紹介しよう。
 ―陣頭指揮をとられた都協事務局長の田中喜八郎(故人)さんは点検の合間には家畜に餌さやりまでしていた。筆舌に尽くせぬご苦労でした。お蔭で1件の二次災害もなく島民は前の生活に復すことができた。(三崎屋商店・藤田周三さん)。―あたたかみと触れ合いがプロパンガス店の持ち味というLPガス事業の原点を見た思い(東亜燃料工業東京支店・島村成人さん)。―人との出会いを待ちこがれていた犬や猫、鳥などと涙の出会いの一コマもあった。(中略)潜在的自然災害地域が国土の10%もある。そこで人口の48%が居住し、その財産の78%が集中している。(ミツウロコ・松枝勝一さん)。(所属はいずれも当時)
 これらを読むにつけ昨今の天然ガスによるネット型ガス供給形態がすべての如く囃されているが、個別分散でお客との触れ合いを信条とするLPG供給の強みを思い知らされる。
豊島さんの歴史類推
 豊島三一さんは昭和48年に都協会に奉職した。協会長は三代目都協会長の内田太郎さんだった。それから29年間、小沢敏克会長、細野傳蔵会長そして6代目現会長の河原勇さんに仕えてきた。初代会長の日本石油ガスの南野次郎さんは知らないが、2代目会長の昭石ガスの西宮誠さんは協会事務所によく来られたからお顔を覚えていると言う。豊島さんが都協に入った昭和48年は、LPG業界が歴史的事件を経験した年であった。
 この年の10月6日の第四次中東戦争から翌49年1月14日のLPGの標準価格(10キロ1300円)の告示までの3カ月のオイルショックは、その後長く業界の姿を限定づけることになった。この辺の事情は、『日連の歴史』(平成元年、日連刊)の151ページに詳しい。同書には48年12月10日、衆院商工委員会の石油需給適正化法案の審議で参考人として日連の副会長でもあった内田さんが熱弁を奮った様が述べられている。
 このころ豊島さんは都協事務局で事業者保険業務に携っていた。内田会長の国会での演説に耳を傾けながら、東京中を保険業務で歩き回った。お陰で東京の業界の隅々まで知ることができた。時移り豊島さんは昨年9月に都LPガス協会専務理事の要職に就いた。
 今、豊島さんは固唾(かたず)を飲む思いでイラク情勢を見守っている。一時的にはサウジのCPは高どまりするだろう。第四次中東戦争時の標準価格を思い出し、歴史のアナロジーを感じると言う。


 プロパン・ブタンニュース2003/2/3 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む