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(2003/1/13 プロパン・ブタンニュース)

八戸液化ガス社長
大黒裕明氏
第九「歓びの歌」がこだました

  八戸液化ガスの大黒裕明社長を八戸市の卸センターにある同本社ビルに訪ねたのは旧臘12月26日である。東北地方はその前日から寒波が襲い、開通して間もない八戸新幹線「はやて号」に乗ったのであるが、盛岡を過ぎるとホワイトクリスマスだった。
 東北新幹線八戸駅開業の幟が立っている八戸駅に下り立てば瀟洒な駅舎は筆者が抱いていた八戸の印象とは全く違っていた。筆者の八戸は烏賊(いか)を干した臭いが漂っている町、鮫の湊は寒々と黒い土けむりが舞っていた。もっと古くは野辺地から大湊に取材旅行をしての帰途、単線の大湊線を乗り間違えて雪の野辺地に夜中に帰り着いた。駅前の木賃宿に投宿して、大勢の人が炬燵に足を突っ込んで寝ている暗がりを手探りで入り込んで寝たことを思いだす。昭和29年の冬のことだった。
 新たに開業した東北新幹線八戸駅にはそんな暗いイメージは少しもない。
 「はやて」効果JR利用客が急増
 昨年12月1日、新幹線盛岡以北開業で一番列車の仙台発「はやて71号」が到着したとき、そして二番列車の東京発「はやて1号」が到着したとき八戸駅東西通路に居並んだ約3百人の市民の合唱団がベートーベンの交響曲第九番「歓びの歌」を熱唱して歓迎した。八戸市はコーラスのレベルが高く、中・高校は全国レベルである。また、11のコーラスグループがあって、大黒社長も男性コーラスグループの一つに所属している。
 駅頭の新幹線歓迎コーラスは、この11のグループの他に一般公募で編成された。大黒さんは商工会議所の祝賀行事実行委員でもあり、駅頭コーラスに積極的に参加した。
 JR東日本の1月6日発表によれば、盛岡―八戸間の「はやて」の1日平均利用者は約1万2千人で、前年同期に比べ47%増と大幅に増えた。「はやて」に接続する八戸駅発着の特急の1日平均利用者も約2割増と好調だった。また、「はやて」に接続する特急「つがる」「白鳥」の1日平均利用者も約7千3百人で前年比21%増。「つがる」の青森―弘前間の利用も1日平均945人と前年の2倍以上である。津軽地方への新幹線効果も大きかったことが分かる。八戸駅の1日平均昇降客は9900人で開業前に比べほぼ倍増である。「はやて」効果は見るべきものがあり、LPG業界への波及効果も少なくないだろう。
 バルク貯槽の輸入陸揚港別コスト比較
 バルク容器の輸入コストを東北6県の都市ごとに横浜ルートと八戸ルートで3百キロ貯槽の運送費用を調べている。運搬車両はクレーンの付いたユニック車か平ボディー車で異なり、それぞれ10トン車と4トン車の場合の四種の料金パターンをはじいた。10トン車は15基、4トン車は9基積むことができる。結果は、青森、岩手、秋田、宮城の各都市は八戸から、福島県の福島市、郡山市、いわき市は横浜からの方が安いことが分かった。仙台に八戸から10トンユニック車で運ぶと約9万円だが、横浜からだと14万円、郡山だと八戸からは約11万円、横浜からは約7万円である。微妙なのが山形で、とくに米沢市は10トン平ボディー車だと八戸の方が安いが、10トンユニック車や4トン車だと横浜からの方が安い。ただし、横浜と八戸に陸揚げされる貯槽の海上輸送費は八戸の方が約10万円高くつき、八戸からの貯槽にはこれを貯槽本数で割った額が加わることになる。
 少々説明がくどくなったが、これは八戸液化ガスが新バルク設置費用を少しでも安くしようと調査、研究したものである。
 このような調査をしたのは、通産省と高圧ガス保安協会の委託を受け、民生用バルク供給の委託調査をしたからである。東北・北海道地区では唯一のバルクシステムの実証試験会社に指定されてデータを蓄積した。新バルクシステム普及のネックはバルク貯槽のコスト高にあるとの認識からこのような調査がなされた。八戸液化ガスは、この3月の今年度末でバルク貯槽3百基が設置される。主として300キロ、500キロだが、業務用では1トン貯槽もある。ローリーは3台が稼働している。
 大黒さんのホームページ
 大黒さんとのインタビューを通じて筆者が抱いていた八戸のイメージが変わっていくのを実感した。昭和25年大阪生まれの53歳、昭和60年に八戸に来て今年で18年になると言う。平成7年に岳父鈴木継男社長を継いで社長に就任した。この稿の参考に八戸液化のホームページを開いたら大黒さん個人のページがあった。
 そこには歌集があり、自作の童謡や歌曲を作詞、作曲して譜面も添えてある。そしてこれらの歌を独唱しているではないか。歌の標題を挙げれば「裏山の」「あじさい」「ごめんなさいね」「ガマの穂」等々である。歌の巧拙ではない。もの怖じせずに自己を表白しているのがいい。筆者は「裏山の」の歌詞が気に入って繰り返し聞いた。


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