(2002/04/29 プロパン・ブタンニュース)
トーエルグループ代表 稲永 修氏
物流改革 ここ掘れわんわん
 トーエルグループの代表稲永修氏を横浜市高田町の同本社に氏のLPG経営論を聞くために訪ねた。筆者はかつて稲永さんのLPG経営論をテーマに岩谷産業が行ったセミナーで講演したことがある。平成7年のことだった。LPガスが競合燃料の天然ガスや電気に勝つためには、LPガスの物流改革に如くはないというものだった。あれから5年が経過したが、その理論と実際は進化こそすれ、いささかも陳腐化してはいない。稲永さんは昔話の花咲爺ではないが、「ここ掘れわんわん」で物流改革を深く耕し続けている。それによって傘下販売店の客先に持ち届けて十立方メートル2800円にまで到達した。
 電力対抗にしても、関西電力はエコキュートやIHこんろの普及に当たり、LPガスの消費者を対象に、LPガス価額を十立方メートル4200円として計画を策定したという。この料金ならばLPガスは対抗することができるし、深夜電力利用の電温の不評もあるので電気の攻勢を逆手にとって目下オール電化のところをLPガスの給湯器に取り替える攻勢に転じていると言う。
充填所の廃止
 また、天然ガスパイプラインが日本の国土を縦断すればLPガス業界は消滅の危機に遭遇すると、まことしやかにささやいてLPガスによる天然ガスにまさる道を探ろうとしない。資源の少ないわが国の場合、天然ガス一辺倒は危険である。用途によりエネルギーの多種併用がよい。いわゆるベストミックスが望ましい。ここにLPガス繁栄の道がある。稲永さんの話は実際的で分かり易い。
 LPガスの経営は物流改革にありとしてここ20年間、この研究と実施を徹底して行った。従来、湾岸基地からタンクローリーで内陸の充填所に運ばれ、そこでシリンダーに充填、大型車でデポヘ、デポから消費者へであった。この物流コストは工場用地、設備、技術者、作業員などの費用がコストに響きかなりの負担だった。
 これを湾岸基地から50キロ容器に充填、20トン平ボディートレラーで充填工場を経由せずに直接収納庫に搬入すれば、七トンタンクローリーの積載量の1.5倍以上のガスを容器詰めにして収納庫に搬入することになる。これによってローリー運賃、充填関係費、工場設備経費が大幅に節減できる。
 充填所ならば2000坪もの用地が必要だし、散水装置や何人もの保安要員もいるが、収納庫なら300坪もあればよい。販売店の収納庫をこのようなデポに化けさせるために県庁と相談して微量のガス漏れをも感知する警報装置や大量の水が供給できる消火栓の設置等を講じた。
 また、大量消費先の配送には通常3トン車が使われるが、湾岸から4.7トン車を使用。しかも積載量は45本(60キロアルミ)×60キロ=2.7トン。これを1日に2回配送で、5.4トンとなった。容器はアルミ時代と認識している。軽量50キロ容器は風袋38キロ、ガス50キロで88キロ。アルミ60キロは風袋30キロ、ガス60キロで90キロ、すなわち2割増しの積載が可能である。
 その他に、大型デポの建設は早朝、夜間の発着が可能なところを選ぶべきである。わが社は夜中の2時に積荷、デポに5時に荷降ろしをする。そうしなければ1日2回の配送は困難である。残ガスは5%を目標にしているが、現在は7〜8%である。
 また、デポにはオートガススタンドを併設して地球に優しい安価なLPガスをタクシー以外に宣伝している。もう一つ付け加えれば、バルクは徹底して990キロのみ設置している。
便利サービスと特定商品の宅配事業
 これまでのマーケット・戦略を生かした事業展開が始まっている。その一つが「便利サービス」で、もう一つが「特定商品の宅配」である。前者は「Gmanネットサービス」と銘打ってエアコンフィルタークリーニング、風呂釜クリーニング、レンジまわりクリーニング、植木の水やり、小さな修繕からリフォームその他。LPガス販売事業者ならではのハートフルなガス外商品であり、消費者から選ばれる事業である。
 現在、一定エリアを受け持つ軽自動車が毎日、150台稼働している。10%の利益が見込めるので月に8万円×150台=1200万円の利益を得ることができる。将来は300台に増やすとしている。ちなみに宅配事業は現在ハワイから水を輸入して販売しているが、一消費者当たり1500円の粗利である。いま始めたばかりで1万世帯に売っているが、これを10万世帯にすれば月間1億5千万円、LPガス以外で年間20億円の粗利が見込める。しかもこの事業は都心に向かって都市ガスエリアに打って出ることができる。これによってLPガスの料金値下がり分を補填できる。
額に汗を。座して利益はない
 昭和28年ころから始まったLPガスも50年を経過しようとしている。規制緩和、法改正と共に消費者が納得する料金で安定した供給をする時代になった。安値売り込みに対して価額だけの防戦では何の進歩もない。物流改革でガス代を下げ、便利サービスや宅配事業で売り上げ補填をと呼びかけているが、販売店でこれらのサービス事業ができないならば消費者を登録してコード番号を取って来いと言っている。何もしないで座して利益を得ようとするのは許されない。

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