(プロパン・ブタンニュース 2001/12/3)

東京都LPガス協会 河原 勇会長
都市ガスエリアでプロパン畑を耕し続けて
 東京都LPガス協会の河原勇会長(河原実業社長、67歳)は、平成13年度秋の褒賞で黄綬褒章に輝いた。本紙は「ウエ ーブ・風(話題と肖像画)」というタイトルで業界に吹き始めた新しい風、そして新しい波をとらえ、その体現者の見解を聴く連載企画を始める。その第1回が都協会長というわけである。この連載は登場する有識者とのインタービュー形式で行われる。それぞれの登場人物の個性溢れる思想、行動がこの企画の信条である。名前は違っても金太郎飴よろしくどこを切っても同じ顔が表れるような連載ならやらぬ方がよい。インタービューアーはナリケンこと本社会長成冨健一郎。ご愛読を乞う。

 黄綬褒章授賞おめでとうのあいさつをして、黄綬褒章は一般の勤労者を対象に、その業務に功労のあった人に授与される褒賞で、綬(じゅ=リボン)が黄色なのでこう呼ばれると聞いて、この褒賞が河原さんにまことに相応しいことがよく理解できた。河原さんはプロパンの畑を深く耕した。いかに耕したかを河原さんの言葉を借りてここに録しておこう。 
 河原さんは栃木県藤岡町の出身。東京は荒川区町屋の羽鳥燃料店に9年半勤めて昭和34年10月、現在の河原実業を始めた。時に25五歳だった。足立区青井一丁目に本拠を置き、一軒一軒プロパンの需要家をつくってきた。現在、河原実業の需要家は6万5千戸である。河原は社員に執拗なまでに新築の家を開発する教育をした。今では新規の客が1カ月に350軒ぐらいずつ増している。河原実業は一軒一軒新築を開発する営業力が強化されている。商権買収はしないのかと問えば、言下に否と言う。切り替え業者が買わぬかと言って来るが、河原実業は問屋ではないとお断りしている。商権買収や切り替え業者のものは、内容がよく分からず、客層がよいものばかりではない。
 これに反して河原のやり方は、地域密着型活動である。事実、河原実業の本社がある足立区青井一丁目町会長を多年続けている。また、青井一丁目にある愛宕神社の氏子総代長でもある。青井一丁目から六丁目にかけて3千世帯ほどあるが、そのほぼ50%は河原実業の客である。これは東京23区内だ。そこでは小規模導管供給を数個所で行っている。
 これらの配管設備費は一戸当たり30万円ほどだと言う。だから十立方メートル4千5百円前後でも最終的に東京ガスより安い。ガス料金は不当に安く設定するべきではない。都市ガスより少々高いくらいの料金に設定してよい。
 LPガス料金の目安として経験的に言えることは、10立方M4千5百円〜5千円、25立方M(50kg)9千円が妥当であろう、と極めて現実的、実際的である。
 昭和55年の末、筆者は都協足立支部を訪ねたことを思い出した。「都協25年のあゆみ」の編集を引き受けて、支部毎の座談会をすることになり、その司会をするために出かけたのである。その時、河原さんは三代目の足立支部長だった。座談会の会場は支部長の店だった。皆の顔がそろったのは7時を過ぎていた。その日の仕事を大急ぎで片付けて駆けつけて来たのである。
 この座談会で河原さんが語った「プロパンの宝庫」の話は今もって強烈な印象と共に蘇ってくる。座談会のその部分を再録しておこう。
 河原=足立区は広く、戦後急速に発展した。同じ足立区でも昔からの市街地の千住と戦後開発された綾瀬、加平、舎人、花畑、竹の塚などとは性格が異なり、足立区には二つの顔がある。戦後開発された地域は、まさにプロパンと共に発展した町である。その間、都市ガスの侵攻に悩まされながら商売してきた。(中略)河原=環7通りの北側にある区画整理地区が一番問題の地域である。45年までは区画整理をしてもガス管が入らなかった。それが区画整理組合と話がついてガス管が入るようになった。これによって大いに影響を受けるようになった。
 この抜書きからだけでも河原さんが早い時期からプロパンの宝庫を開発し、そしてそれを守り育ててきたかを知ることができよう。その姿勢は今も一貫していてLPガスのボンベを電気や都市ガスに渡してはならないと奮闘している。
■ニューウエーブ 河原実業
 河原実業は需要家6万5千軒を擁し、小売業として大国である。20年前に東京都協会の足立支部長だった河原さんは突貫突貫の熱血支部長だった。筆者は20年前の足立支部の座談会でそのような強烈な印象を受けた。それが今日の河原さんはどうだろう。20年の歳月は人をこのように円熟させるものか。持ち前の闘志は内に秘めているのだろうが、都協会長として災害の三宅島のライフラインLPガスの総点検の指揮をとる姿には気品をさえ感じた。河原実業は埼玉県八潮市に充填所を持ち、今や関東一円に商圏を拡大しているが、業界に新しい風を、そしてニューウエーブを起こすに違いない。

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